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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜35
千の偽り…
ー"本当"なんかいらない。大抵のことは嘘で塗りつぶせるから。
万の嘘…
ー繋がりなんか必要ない。どうせ嘘で塗り固めたものだから。
電ライナーから一歩出れば、全てはよそ行き用に作り上げた自分。
女の子に声をかけるのはゲーム…笑顔は造りもの…その場が楽しめれば、それで良かった。
…君に出会うまでは…
〜電ライナー〜
「おら!!今更隠したってしょうがねぇだろ!!」
モモタロスの背に隠れるように立つ青い影が一つ。
「…」
ウラタロスがおずおずと一歩前に出た。
「…あの…彩ちゃん…」
いつも饒舌なウラタロスが言葉に詰まる。
…一緒にいた時間が"絶対"じゃないことくらい
分かってた。でも、こんなに突然終わりが来るなんて…
彩は不思議そうに彼を見つめた。彼があの浦太郎だとは分かるはずもない…
「あのね、彩ちゃん、話すと長いんだけど…」
良太郎はその場の空気に焦りながらウラタロスと彩の間に入る。
「…知ってたよ」
彩の笑顔。
それはいつもと変わらぬものだった。
「え?」
俯いていたウラタロスが顔を上げる。
「ウラ…でしょ?」
「気づいて…たの?」
ウラタロスはおずおずと彩に視線を合わせる。
「初めて会った時からね。イマジンことは知ってたし…それに、良太郎といつからの付き合いだと思ってんの??イマジンに憑かれてたって本人かどうかぐらい分かるさ」
彩は胸を張った。
「…じゃあ、知ってて何で…」
呆気にとられるウラタロスに代わって良太郎が尋ねた。
「初めは良太郎が心配だったから…イマジンなんかに付け込まれて、憑かれて、良いように使われてるんじゃないかって…とりあえず、良太郎に憑いてるイマジンがどんなヤツか調べようと思ってね…」
彩はウラタロスに向き直ると真っ直ぐ彼を見つめた。
「それに…ウラは信用できそうだし」
「…彩ちゃん」
彩はウラタロスの本当の姿を見ても動じることはなかった。
本当の姿であっても変わらぬ笑顔を向けてくれる彩に、ウラタロスの表情も綻んだ。