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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜56(前回の56は間違いです。)
「薄情なヤツ…」
彩は呆れながらも、ぴょん吉らしい行動に思わず吹き出した。
彩もぴょん吉に続こうと一歩踏み出す…
瞬間…彼女は表情を強ばらせて動きを止めた。
ードクンー
…脈打つ目眩…
彩はとっさに右腕を押さえた。
…これは前にも経験している。
彩は引きずっていた左足に恐る恐る視線を向ける。
ー始まりかけてるー
ぴょん吉の言葉が頭をよぎった。彩は左足の痛みと、ぴょん吉の言葉に眉をしかめた。
右手を押さえた手が震える…
彩は震える視線を遠くに見つけた良太郎とウラタロスに移す。
ー本当のこと全部話しちゃったら?ー
…本当に全部話してしまおうか…ぴょん吉の言葉に心がなびく。
「…ダメだ」
言えるわけない。
彩は首を振るとその考えをかき消した。
…言っちゃいけない…これは私の問題なんだ。
周りを巻き込むわけにはいかないんだ。
どうせ、時間が過ぎれば関係なくなるんだから…
彩はもう一度、良太郎とウラタロスに目をやった。
「時間まで…一緒にいられるだけでいい…それだけでいい」
二人の顔に表情が緩む。…せめて、その時までは、いつも通りに接していたい…
彩は一度俯き、右手に当てた手を強く握り締めると、深呼吸して顔を上げた。
その顔は"いつもの"明るい彩の表情だった。
右腕を押さえた手を離し、引きずる左足に力を入れて、一歩前に踏み出すと、彩は何事もなかったように彼らのもとに歩いていった。