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虚無と無限の剣製者13
「俺の世界には『魔法』は五つしかない」
「四系統魔法じゃ無くて?」
ルイズが訝しげに聞いてくる。
どう説明したらいいのだろうか。『こっち』と『あっち』では魔法の概念が違う。
「まあ、簡単に言うと俺の世界の魔法は…」
コンコン。扉をノックする音が響いた。
「誰か来たみたいだな」
ルイズにそう言いつつ扉まで歩く。
「ちょっと!!まだ話は終わってないでしょ」
ルイズが叫ぶ、が…
「訪ねて来た人を待たせられないだろ?」
「う…分かったわ」
ルイズもそう思ったのか、大人しくなる。
「ただ、その『俺』って、言葉使いは止めなさい。私の品格が疑われるから」
「わかった」
ドアを開ける。
そこにいたのは、燃えるように赤い色の髪をした女の子だった。
彫りの深い顔、突き出たバストがメロンの様に大きい。褐色の肌が健康的な色気を振り撒いている。
背は『今』の士郎よりも少し高いくらいか。
「あれ?あなた誰?」
彼女は困惑したように士郎を見つめる。
彼女の疑問はもっともだ。知り合いの部屋に訪ねて来たのに、見ず知らずの人物がドアを開けたのだから。驚きもするだろう。
「えーと…一応、昨日からルイズの使い魔をやっています」
取り敢えず説明しておく。「へ〜え、ホントに人間なんだ」
興味深げに士郎を見たあと、ルイズを見てにやっ笑う。
「おはよう、ルイズ」
ルイズは顔をしかめ、心底嫌そうに挨拶を返す。
「…おはよう、キュルケ」どうやらルイズとキュルケは仲が悪いらしい。
「『サモン・サーバント』で人間喚んじゃうなんて、実にあなたらしいわね。ゼロのルイズ」
ルイズの頬に、さっと朱みがさす。
「…うるさい」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。あなたと違って一発よ」
キュルケが勝ち誇ったように言った。
ルイズのこめかみがピクピクしている。
「使い魔にするなら、こういうのがいいわよね〜。フレイム〜」
その声に誘われるようにのっそりと、真っ赤な蜥蜴が姿を現した。尻尾から炎が迸っている。
「サラマンダー…?」
確かそんな名前の幻想種だった筈だ。
(幻想種が使い魔か…)
すごい世界も在るものだと思う。
「そうよ、よく知っているわね」
キュルケがさも驚いたように言った。
「見て?この尻尾。間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。私の属性にぴったり」
「あんた『火』属性だもんね」
ルイズが苦々しい声で言った。