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ゼロと双剣の使い魔 36
「こいつはかの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が鍛えたもので、魔法がかかってるから鉄だって一刀両断でさ」
ルイズは一目で気に入ってしまった。
「店一番の技物でさ。貴族のお供をさせるならこのぐらいは腰から下げてほしいものですな」
「おいくら?」
それを聞いてきたのはルイズではなく、キュルケだった。
「ちょ、キュルケ!横取りするつもり!?」
「どうせあんたじゃ買えない値段じゃないの?なんてったってかの有名な錬金魔術師が鍛えた技物なんですもの。それで、おいくら?」
キュルケはルイズを押しのけて主人に聞いた。
「エキュー金貨で二千、新金貨なら三千でさ」
「って、立派な家と森付きの庭が買えるじゃない!」
「たしかに、ちょっと高いわね」
ルイズとキュルケは同じくあきれていた。
(これって両手剣だよな。ルイズはなんか気に入ってるみたいだけど、俺、二本使うって言ったこと忘れてるのか?)
「はぁ、ちょっと待てよ。それにするなんて言ってないぞ。俺は剣を二本使うって言ったこともう忘れたのか?」
それを聞くとルイズは『ああ、そっか』と今思い出したように言った。
「確かにこの剣じゃ、二本使うのにかえってやりにくくなりそうね」
ルイズはその剣を見て未練がましそうな目をしていた。
「だいたい、それって装飾剣じゃん。実戦じゃ役に立たないって」
「そうなの?っていうかなんでそんなことあんたにわかるのよ」
「ま、俺もいろんな剣を見てきたからな、大体はわかるようになった。それに、剣の良さは見た目で決めるものじゃないぜ」
それを聞いた店主は、ロイドがただの平民の使い魔でないことがわかり目の色を変える。
すると、横から低い男の声が聞こえてきた。
「おう坊主、若いのになかなか見る目あるじゃねえか。そこの貴族の娘っ子どもは節穴みてえだがよ!」
声のするところを見てみたが、誰もいない。
店主が頭を抱えているだけだ。
「誰もいないじゃないか」
「ここだって!ここ!」
ロイドは声のする方へと歩いていき壁に立てかけてあった一本の剣を手に取った。
「もしかして、こいつか?」
ロイドは剣を鞘から抜く。
刀身に錆が浮き、ところどころ刃こぼれのある片刃の長剣だ。
「おうよ!」
「剣がしゃべってる。もしかしてインテリジェンス・ソード?」
ルイズが物珍しそうな声を挙げる。