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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜48
彩はぴょん吉の背を押してを促すと、固まったままのカイの横を通り過ぎていった。
そして、一二歩歩いて立ち止まると彼を振り返る。
「アンタ、友達いないでしょ」
「は?」
体の自由がきかない今の状態でイライラが最高潮に達しているカイ…更にそんな言葉を投げかけられては怒りも爆発寸前だった。
「ワガママ言って、だだこねて、気に入らなければ力で押さえつける…典型的なガキ大将タイプよね」
彩はカイの怒りの表情など気にする様子もなく、フフンと鼻で笑って見せた。
「私が友達になってあげようか?アンタみたいな奴はよく知ってるから…」
彩はからかうように悪戯っぽく笑ってみせる。
「意味わかんないんだけど…お前、殺されたいの?」
カイは彩を睨みつけると動かない拳を震わせた。
「ははっ、怖い怖い。」
どんなにカイに睨みつけられても彩は動じることなく笑って見せた。
彩はそのまま向かおうとしていた方向に体を向けると、オロオロするぴょん吉を促し、再び歩き出した。
遠くなる彩の姿を睨みつけると、カイは憎々しげに口を開いた。
「お前、そいつが力貸してるからっていい気になるなよ。お前はただの人間なんだ。契約がなければ、お前なんか…」
「分かってるよ」
それ以上言うなと言わんばかりに、彩がカイの言葉を遮る。
「自分の立場くらい分かってる。だから、約束も…契約も…必ず、果たす。…何があっても」
低く、ゆっくりした言葉だった。今までの余裕な笑い声とは違う…決意のこもった言葉。
カイはその言葉に、今までの彼女に対する怒りも喉元で押しとどまってしまったようだ。
何も言えずに口をつぐむ。
「まぁ…」
彩は大きく息を吸い込むと小さく溜め息混じりの声を出す。
「"その時"までよろしくね。」
低い声から、また明るい声に戻ると、彩は手をひらひらと振ってみせる。
そして、何か言おうとするカイを残して再び歩き出した。