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ヒグラシのなく頃に(消滅編其の七)
騒ぎになったのは・・かすかに覚えてる・・・気が付いたのは保健室のベッドの上だった・・
「ああ、いたたっ、ここは、」
「やぁやっと起きたのかい・・」
目の前にいたのは眼鏡をかけたひょろそうな男だった
「こんにちは、君は確か今日転校してきた子・・だったよねぇ、しかしキミがはじめてだよぉ・・女の子に泣かされて保健室に来る子なんて・・・沙都子ちゃん心配してたぞぉ、自分のせいでって泣いてたみたいだし・・」
「すんません・・・」
「あっ、僕自己紹介遅れちゃいましたね・・この村の病院で入り江診療所開いてる者で、それでこの学校の勤務医も担当してます、みんなからは監督って呼ばれてんでそっちで呼んでもらった方がうれしいかなぁって思うんだけど・・」
「ああ・・そうですか・・」
聞いてねぇよ・・
窓の外を見た・・少し夕暮れに近い色をしている・・この時間じゃあの子帰ったかなぁ・・
「沙都子ちゃんならまだいるよ・・そして・・梨花ちゃんも・・まだ部活中じゃないかなぁ?」
「部活ってええ、外は何の練習もやってないみたいですけど・・」
「教室でやる部活だもんそりゃ・・カードとかトランプとかやる部活みたいだよ・・」
「はぁ、」
カード・・トランプ・・ねぇ
「しかしキミもにくい男だねぇ・・・」
「はぁ」
また訳わかんないこと言い出したぞこの人
「転校初日から女の子二人を心配させるのなんて、なかなか出来る芸当じゃないぞ、でも、沙都子ちゃんは譲れないぞ・・・」
「そうですか・・」
俺は黙って去るつもりだった・・でも俺の意思とは無関係に・・・
「心配しなくても・・俺に幸せはありません・・・から・・絶対に!」
保健室 監督だっけ・・きょとんとしてたっけ・・・
俺には無関係・・いつもそう言って逃げられると思ってた・・逃げ切れるとおもってた・・・
訳わかんないこと言ってんのどっちだよ・・