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もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない 1
手に入らないものなど何もないと思っていた。金で買えないものなど何もないと思っていた。そう思えるだけの富を持ちながらも決して満たされることのなかった退屈な毎日の中で
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俺は
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椛と出会った。
俺が学園で初めて椛を見かけたとき、クラスメイトが遊ぶ中で紅葉は1人黙々と教室の掃除をしていた。俺は、自分の意志を持たないヤツが嫌いだ。自分の意志を持っているのに、それを表に出さずに他人に迎合するヤツはもっと嫌いだ。だから椛を初めて見たとき、俺は腹が立った。特に目を引いたわけではない。俺はただ、椛に腹が立って・・・・少し気になっただけだ。そしてほんの暇つぶしのつもりで、椛のことを調べた。
両親は6年前に事故で他界。現在は親戚に引き取られているが、両親の財産を横取りされ、邪魔者扱いされている。もともと身体が弱く、それ以上に気が弱い紅葉は、両親の死後、ほとんど口をきかなくなったという。まるで自分の存在を消してしまいたがっているように・・・。
些細な好奇心を満たしてくれれば、それでよかったはずなのに・・・・椛のことがわかればわかるほどに、俺は紅葉のことが気になった。そしていつの間にか俺は、椛に憎しみさえ抱くようになっていた。
この学園に入学してから、椛には1人も友達がいない。俺にも友達などというものはいないが、それは俺が望んだことだ。なにより、クラスメイトはおろか教師でさえも、俺に気安く話しかけるなどということはできない。
俺は、奴らとは違う人間なのだから当然だ。
では、椛はどうなのか?・・・まさか椛も俺と同類だというのか?そんなことはあり得ない。椛と俺とでは生まれも育ちも心の強さも違う。椛は他の奴らと同様、俺にとってはどうでもいい存在、足元を蠢く虫だ。