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ヒグラシのなく頃に(消滅編其の四十二)
目の前にはでかい白塗りの古ぼけたアパート
「だから俺は!」
「男がここまできて四の五の言いなさんな!」
無理やり手を引っ張られ連れて行かれるそれなりに暴れたが・・
所詮子供の力・・大した抵抗など出来なかった
カギを開け扉が開く・・・えっ?
外の外見とは裏腹に中は絨毯張りクーラーも完備、棚にはかわいい小物や写真立てが置いてある・・どう見ても独身男が1人で住むような部屋ではないどちらかと言えば新婚さんが住むような部屋・・しばらくぼおっとしてたのだろう男は冷蔵庫からビールとどう見ても子供が飲むようなオレンジジュースを取り出してきた子供がいるのか・・ここ
「好みがわからへんかったかったからな・・オレンジジュース嫌いか?」
ろくな声も出せず首を横に振る
「よかったぁ・・他にもカルピスやコーラとかあるさかい、飲みたくなったらいつでも言うてや・・ってか今日からこの俺の子供やから勝手にとってもええで!」
やけに1人で盛り上がる人だなぁ・・そう思った・・
「よし!飯作ろう!それより風呂か!?」
そして・・あまりのフレンドリィーな空気に肩を落とした
「あの・・金・・・取らないんですか?」
するとこの人の答えはこうだった
「あっ・・金!そや、金・・・しかしどないうてもお前が稼いだ金やしのぉ・・・」
ここまで来てこんなマヌケなこと言う人はじめてあった・・・
「そや!」
わざとらしく手をポンっと叩く・・
「その金お前が持つ!」
「はっ・・?」
「そして!必要な時だけわしはお前に許しを請う!これや!我ながらなんと言う活気的なシステム!」
そのシステムに名前を付けるんならアホと言うんじゃないか?それ・・・もしくはマヌケ・・
「よし!後はお前の名前や!保護者が子供の名前知らんなどシャレにならん!」
言い切ったよ・・この人・・
「名前は!」
まるで選手にマイクを向けるみたいに俺に渡した
「野木麻人・・・」
「よし!アサ公やお前の名前はアサ公や!」
もう・・好きにして・・・
「ハマ公、ハチ公、年の功・・最後だけ漢字違うやないかい!はっはっはぁ!」
ダメだ・・もう止められない・・・