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ヒグラシのなく頃に(消滅編其の百五十ニ)
しばらくして・・三人はいつものように牢屋の中にいた
「ノアサ・・ユユはなんて?」
ミナはユユの介抱をしながら話題をさっきのことに戻していた
「あのね・・ユユ、昨日カジノを見て回った時ねお客さんが話してるの聞いててね・・」
「面白い話?」
「うん、この船ね・・ラウンジがあるんだって、それも・・もの凄く眺めのいい・・」
「その話は聞いたことあるわ・・でも、そのラウンジに出る道は、一般のお客さんしか通れない場所にあるわ、私たちが通ろうとすれば黒服の人達に蜂の巣にされるのがオチよ」
ミナはユユの真っ赤になったティッシュを変えながら物騒な話をしている
「でもね、ユユが言うにはね、そこを通らないでも出られる道が他にあるんだって・・・」
「他の道?それは初めて聞いたわ・・」
「うん、でもそこに行くには・・どうしてもね・・廃品部屋を通らなきゃいけないの。」
「廃品・・部屋って・・あそこの?」
「うん、」
急に雰囲気が重くなるのを感じた・・
「ダメ・・」
ミナが唐突に口を開く
「えっ?」
「ダメって言ったらダメ絶対に!」
「ミナ・・」
ミナはノアサの肩をがっとつかむ
「廃品部屋・・だって・・あそこは・・」
「どうしたの、ミナ?」
ミナの肩がやけに震えているのが気になったのか・・ノアサは手を伸ばし、触ろうとしたその時
(コツコツ)
突然後ろからの足音・・振り向くと黒服の人が牢屋の前に立っていた
「NO.0032 アサトノギ、時間だ来い・・」
男は静かにそれだけを口にした
「わかりました・・ミナ・・ちょっと行ってくるよ・・」
「あっ、うん、気をつけ・・」
(ガシャ―ン!)
乱暴に鉄格子を蹴る音
「早くしろ!お客様をお待たせするな!」
黒服の男だった
「わかってます・・ごめんなさい・・」
ノアサは促されるままに檻の外に出されるとそのまま行ってしまう