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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜51
…風
川の水面を揺らし、川沿いの土手の芝生を撫で、そして…芝生にうずくまる彼の髪を優しく揺らした。
【…良太郎】
抱えた膝に顔を埋めたまま、動こうとしない良太郎。それを覗き込むと心配そうにウラタロスが声をかけた。
…返事はない…
「…サボっちゃった」
…少しあって、良太郎が微かに口を開いた。
【…え?】
「お店…手伝うはずだったのに…サボっちゃった…怒ってるかな、姉さん」
微かに見える気弱な笑顔、良太郎のいつもの表情だった。
彩と電ライナーで別れたのは昨日…良太郎は電ライナーを飛び出して、どこをどう歩いたのか、いつも自転車で通る川沿いの土手にこうして座り込んでいたのだ。
「…彩ちゃんのこと…」
始めに"その事"に触れたのはウラタロスだった。
その言葉に良太郎が顔を上げた。
「聞いたことあるんだ。戦闘能力のないイマジンは稀に特殊能力を持ってることがあるって…ほら、彼(?)すごく弱かったでしょ?だから、特異点でもない彩ちゃんが時間を超えることも可能にできた。だから、オーナーが言ってたこと…一概に否定できないんじゃないかな…」
「分かってるよ!!」
ウラタロスの言葉を遮るように良太郎が声を荒げる。
一瞬の沈黙…
「分かってるけど…」
良太郎は再び俯いた。大きな声を出してしまった自分自身に戸惑っているのか、俯く視線が揺れる。
「小さい頃からずっと一緒だったんだよ…彩ちゃんは、ちょっと乱暴なとこもあるけど…優しくて、まっすぐで…」
か弱い声だったが、伝えたい気持ちが強いのだろう、意志のはっきりした声だった。
「ウラタロスは…」
良太郎の声は震えていた。それは恐れや動揺ではない、名を呼んだ彼への明らかな怒りだった。
短い間とはいえ、彩と共に過ごした…言葉を交わして…笑いあって…ウラタロスだって心を許しているように見えた。
それなのに…
「ウラタロスは…平気なの?!」
やっと絞り出した声だった。良太郎は、直接ウラタロスの顔を見ることはできなかった。