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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜40
「良太郎がこんなに楽しそうにしてるんなら…大丈夫かなって…」
良太郎とイマジンとの関係をかなり心配していたようだ。先程より彩の表情が緩んで見える。
「楽しそう??」
更に首を傾げるコハナ。
一つため息を吐くと、彩が口を開いた。
「契約はね…」
今まで騒いでいた良太郎もそちらに顔を向ける。
「怪我を治して、修との約束を果たすこと。だから、ぴょん吉は私が約束を果たすまで何もしないし…コイツは優しいから、もし契約が成立しても悪いことしないよ」
彩は良太郎に笑顔を向ける。
一番彩を心配していたのは良太郎、それを彩も察していたのだ。
「じゃあ、私まだ仕事残ってるし、行くね。」
彩はその場を仕切り直すように明るい声ですくっと立ち上がった。
「そうそう、これ…」
そう言うと彩は持っていたカバンから包みを取り出した。
可愛らしくリボンで結ばれた透明の袋には動物の形をした小さなクッキーが入っていた。
「これ…」
良太郎は包みを目にすると目を丸々とした。
…懐かしい…そんな感情が当てはまるのだろうか。それは小さい頃によく彩が作って持ってきてくれたものだった。
「本当はあいりさんにも食べてもらおうと思って持ってきたんだけど…まぁ、良かったらここのみんなで食べて。久しぶりに作ったからさ…食べたら感想聞かせてね」
彩はそう言って良太郎に手渡した。
「ありがとう…」
そう言いかけた時、
「…彩ちゃん?…手…」
良太郎は恐る恐る彩の手をとる。
彩の右手の甲、ちょうど中指の付け根あたりから腕に続く袖の中にかけて赤茶色の筋がうっすらと浮かび上がっていたのだ。"あの日"の傷だった。
良太郎は表情を曇らせた。
ー輸血の点滴、体中に巻き付けられた包帯、笑顔を失った彩の青白い顔ー
彩の傷跡を見て、あの事故の時の記憶が断片的に蘇ったのだ。
良太郎の表情を見ると彩は少し考えるように視線を落とした…が、
"バシッ!!"
「大丈夫だって!!」
彩は良太郎の背中を力一杯ひっぱたいた。
「いぃっ、痛いよ…」
苦笑いする良太郎。
「私はこの通り動けるようになったんだから!!暗い顔しないの!!」
彩は良太郎に掴まれたままの右手をブンブン振ってみせた。