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仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜
狂宴?
「葉…」
隼人の五感が葉と血の気配を見つけた時、全ては終わっていた。
葉の身体は肩から心臓に向けてバッサリと切りつけられ、更に全身をズタズタにされ、血溜まりに浮いていた。
「おい…なんだよ…」
隼人は葉の身体を抱き上げる。
心臓の音も体温も何も感じられない。
今まで葉だったモノが其処にはあった。
「娘と暮らすんだろ?明日もまだ依頼が入ってんじゃねぇか…お前何やってんだよ…」
隼人の心をドス黒い感情が支配した。
消えかけていた『悪魔』が動き出す。
「そうか…俺はやっぱり…」
呟いたその姿は一文字隼人ではなかった。
その男は人通りの無い暗い道を我が物顔で歩いていた。
その表情は全ての物が満たされ、充実した喜びの表情だったが、どこかが欠如した不安定さとひたすら残虐なモノが感じられた。
男が煙草を取り出した時だった。
男の背後に二つの巨大な眼が現れ、男の腕を締め上げた。
「な…なんだ!?」
「お前…だな…お前から血の臭いがする…一人じゃない…何人もの血の臭い…それに葉の臭いもある」
影から現れたのはマスクとプロテクト・ギアに身を包んだ一文字隼人だった。
「お前…」
男は人間とは思えない力で隼人の腕を外すと粒子に包まれあの蟷螂の姿に変わった。
「なんだ…お仲間か…俺は『マンティス』あんたも狩りでもしてたのかい?」
近づくマンティスの腹に隼人の拳が叩き込まれた。一発ではない。
それこそプロテクト・ギアが砕け、生身の肉体が露出するまで。
「テ…メェ…なんのつもりだ…組織を裏切る気か…」
「俺は悪魔だ…いやお前たちが悪魔にした…俺の友達を奪い、まだ俺を悪魔にするならショッカーごと喰らいつくしてやる」
隼人はマンティスの腕をへし折り、肩から身体をまるで紙でも千切るかのように力任せに引き裂いた。
鮮血とマンティスの悲鳴が聞こえ、隼人は仮面の下で涙を流した。
狂宴 END