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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜21
「ウラ」
彩が少年を睨み付けたままウラタロスに声をかける。
「え?」
「手、出すなよ」
「手始めに、その顔一発殴らせてもらっちゃおっかな〜」
「やっちまえ薫!!」
背後から声援が飛ぶ。
"薫"と声援を受けた少年が拳を振り上げた。
「根元薫…17歳…家族構成は母、姉が二人に妹一人…」
「あぁ?」
薫が振り上げた拳の勢いを弱める。
彩のすぐ横にいたウラタロスが眼鏡をカチャリと持ち上げて微かに笑って見せた。
「…なんで、コイツ薫ん家のこと…」
今まで盛り上がっていた後ろの二人は呆気にとられたように口をあんぐりとあけた。
「外ではかなり突っ張っているが、家ではお姉さんに全く勝てない」
ニヤリと笑うとウラタロスは薫の耳元にそっと口を持っていく。
「お姉さん、冷蔵庫のプリンを君に食べられたってカンカンに怒ってたよ。お姉さん、そろそろ仕事終わる時間だよね?」
「て、てめぇ、何でそれを…」
薫は急に焦りだした。
「そろそろ来るんじゃない?お姉さんから…」
―その時、店内に着信音が流れ出した。これは、STAR WARSのダースベーダーのテーマ…?恐怖の存在であることがすぐ分かる。
「うわっ、姉ちゃん!!」
薫は携帯の液晶を見ると顔が青ざめた。
「お、お前ら覚えとけよ!!」
薫を先頭に、少年たちは出口へと走り出した。
「あ!!」
出口付近で彼らは一度振り返ると
「約束の日まであと少しだからな!!忘れんなよ!!!!」
そう言い捨てると、彼らはそそくさと逃げていった。
「ははっ、ベタな着メロだな」
彩は半ば呆然としていた。
「…ウラ」
彩は気がついたようにウラタロスに目をやる。
「…なんでアイツん家のこと?」
彩は素朴な疑問を投げかける。
「…お姉さんとは前々からちょっとした知り合いで(…ってゆうかこの辺の女の子ほとんど)」
…本当に電話かかってくるとは思わなかったけど…
「へぇ」
彩は少し怪しげに返事をしたが、すぐに表情を元に戻すとウラタロスに向き直った。
「ありがとう」
真っ直ぐな笑顔とお礼の言葉。先程彼らに向けたものとは違うが、彼女はいつも真っ直ぐなのだということが分かる。
「いえいえ」
ウラタロスもつられて笑顔になる。