15
仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜
遺産?
「そっかぁ〜お父さんの学生さんだったのね。私、大学の方に行ったことないからわかんなかったわ」
「いえ、僕も初対面でしたから…でも教授からお話しは聞いていたましたよ」
猛は改めてルリ子の顔を見つめた。確かに若く見えるが何処となくあすかに似ている。親子というよりは年の離れた姉妹と言った方がしっくり来るような気がした。
「お父さん…今どこにいるのかな?」
「えっ…」
さっきまで明るく無邪気さを振り撒いていたルリ子の顔に一瞬だが影がさしこんだ。
「私…駆け落ち同然で家を飛び出しちゃったからさ…それから全く会ってないし。悪い娘だよね…お父さん…あすかが生まれたことも知らないんだよ」
猛は口をつぐんだ。
言えない。
言えなる筈がなかった。
まさか緑川教授が人体改造実験に協力していたなどど…その為に教え子を『選び』改造し、猛に悲劇の仮面を被らせたことを。
「そういや、あすかちゃん遅いね」
二人の沈黙に耐えきれなかった立花がポツリと言った。
「大丈夫よマスター。あの子は私よりしっかりしてるもの」
ルリ子は差し出されたコーヒーを一気に飲み干し明るく言った。
「マスター、私夜からまた仕事だからちょっとお昼寝してくるわ。本郷さん、楽しかったわ、ありがとう」
ルリ子は店の奥へと消えていった。
「明るい人ですね」
「まぁな…あれで結構苦労してんだがな」
立花は煙草を一本くわえると火を着けるでもなくそれを弄った。
「ルリ子ちゃんの旦那…つまり、あすかの父親な…俺の古いダチで若かったが、気立てのいいしっかりしたやつだった。でも突然いなくなっちまってな…ルリ子ちゃん、荒れてな。山みてぇな借金こさえちまって…ここに転がりこんで来た時は目もあてられなかったのを覚えてるよ」
猛は殆ど冷めかけたコーヒーを口にし、その話を聞いていた。やがて店内に流れていた音楽が止むと、どこからかポツポツと軽快な音が聞こえ始めた。
雨が降っていた。