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ヒグラシのなく頃に(消滅編其の百二十一)
やがて階段をのぼる次第に神社っぽい建物が見えてきた梨花ちゃんは・・いたっ!
木々のある高台みたいなところで風に吹かれていた・・青い髪がそれになびいて・・
こんな光景・・いつか見たいって思ってた風景だった・・その子は振り返りにこっと笑って・・
「ここなのですよ!ノッアサァ!」
ぽおっとしてたみたいだ・・でも・・その声に導かれるかのように・・足が動く・・
ここは・・
「ここが僕たちのとっておきの場所なのです。」
夕日が静かに沈んで村全体が茜色に染まっていくそれはとても幻想的で・・でも同時に・・
ほんとに・・僕はここにいていいんだろうか?
目が少し・・潤んで・・
「きれい・・ほんとに・・うっ・・うっ・・」
「ノアサは大げさなのです」
「違う・・ほんとに・・うれしいんだ・・僕は・・」
「ここから雛見沢がよく見えるのですよ・・日曜日はみんなでお弁当を食べたり、焼肉パーティしたり・・ノアサも参加したらきっと楽しいのですよ!」
「僕も・・僕も・・こんな景色見れたんだ・・こんな僕でも・・見れるんだ」
「今からノアサが暮らすとこだから、いつだって見れるのです何度でも・・」
「うっ、ぁぁぁ」
「もう、泣き虫なのですね・・ノアサは・・」
違う、違うんだ・・離たくないんだ・・ここ・・暖かいんだ・・寒くないんだ・・
「こんなに・・きれいだったんだ・・この世界は・・こんなにきれいだった!・・なのに・・
なのに・・僕は!」
「ほら、約束破ってます・・嫌な事はもう・・思い出さない」
手に小さく暖かい感触・・
「ほらっ、きれい・・感じるのはそれだけでいいの・・ここにはあなたの過去を気にする人なんて・・一人もいない・・今あなたはここにいる・・それだけでいいの・・」
ほんとに・・僕は・・バカだ・・
「ははっ、そうだね、そうなんだね、来よう・・今度はみんなで・・」
「きっと、楽しいのですよ!」
「うん、うん・・」
涙が止まらない・・違う・・ここ・・泣くとこじゃないって・・
「ありがと・・」
えっ?・・・ぼく?
「ここにいてくれて・・ほんとにありがと・・」
僕達はしばらく夕日が落ちていくのを眺めていた・・ただそれだけ・・会話も何もなかった・・でもそれだけで・・