16
もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない 18
「椛・・・誰か、好きな男はいるか?」
「えっ・・・!?」
意表を突かれて、椛は目を丸くした。
「あの・・・」
「どうなんだ?」
「・・・・・・」
椛はチラリとこちらを見たが、俺と目が合うと頬を赤くして顔をそむけた。
「・・・い・・・いません・・・」
椛は、絞り出すようにそう言った。
「そうか・・・」
椛は、人を好きになることさえあきらめてしまっているのだろうか・・・。
「・・・それじゃ、いままでに人を好きになったことはあるか?」
「・・・・・・」
椛は、またチラリと俺を見た。
「あの・・・どうして・・・そんなことを・・・?」
答えに窮したのか、椛が聞き返してきた。
「・・・べつに・・・ただ、なんとなく聞いてみただけだ・・・」
「・・・そう・・・ですか・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・それで、どうなんだ?」
「えっ?・・・あの・・・ありません・・・」
「・・・本当か?」
「はい・・・」
「・・・・・・」
なぜか、俺はホッとすると同時に寂しい思いを感じていた。
「・・・?」
「・・・すると、初恋もまだなのか?」
「・・・・・・」
椛は恥ずかしげにコクンとうなずいた。
「そうか・・・」
「・・・・・・」
初恋も知らない女の純潔を、俺は奪ってしまったのか・・・。
「・・・・・・」
・・・しかし、後悔はしていない。
あの時は、あれしか椛との絆を作る方法がなかったのだ。
あの一歩を踏み出さなければ、今のような椛との関係もなかっただろう。
「・・・・・・」
「・・・椛は、いつか人を好きになることがあると思うか?」
「・・・・・・」
椛は首を振った。
それは否定ではなく、わからないという意味だろう。
いつか、椛にそんな日が来るとしたら・・・。
娘を持つ親の心境とは、そんなものだろうかと俺は思った。