14
もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない 16
観覧車を降りると、もう日が沈みはじめていた。
そして俺たちは遊園地を後にし、屋敷へと戻った。
その夜、椛はいつも通り俺の部屋に来た。
「椛、今日はゆっくりできたか?」
椛はコクンとうなずいた。
「そうか・・・もっとも、椛としてはせっかくの日曜まで俺の顔を見て過ごすのはいやだろうがな」
「・・・・・・」
椛はフルフルと首を振った。
「・・・本当にそう思っているのか?」
「・・・・・・」
問い詰められて、椛は困惑した目で俺を見た。
椛は、かすかに頬を染めて顔をそらした。
「・・・・・・」
「私は・・・」
横を向いたまま、椛が口を開いた。
「ん?」
「ここにいて・・・和人さんと・・・」
「・・・・・・」
「あの・・・だから・・・」
「椛・・・おまえ・・・俺と一緒にいたかったのか・・・?」
「・・・・・・」
椛は首を縦にも横にも振らず、さらに赤くなった顔をうつむかせた。
・・・まさか、な。そんなことあるはずが・・・。
「・・・椛」
俺は、椛の頭に手を置いた。
「次の休みにでも、どこか行きたい所があったら言え。連れて行ってやるかどうかは気分次第だがな」
「・・・・・・」
椛は俺を見てから、うなずいた。
「さて、そろそろ寝るか・・・椛」
「はい・・・」
俺は椛に少し長めのキスをする。
そしていつものように椛を布団に招き入れた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
いつものように、俺達は無言のままベッドの中にいた。
「・・・・・・」
椛がもぞもぞと体を動かした。
すると、俺の胸に椛の体重が感じられた。
「・・・・・・」
目を開けなくても、椛が俺に体を預けてきたのがわかる。
俺の首筋を椛の髪の毛がくすぐり、鼻先に心地よい香りが漂ってきた。
「・・・・・・」
それは、ただのシャンプーとリンスの香りのはずだ。なぜかひどく懐かしい感じがした。
これは・・・真理か?それとも静流だろうか?
「・・・・・・」
椛が顔を寄せてきて、いっそうその香りが強まった。
俺は、思わず椛を抱きしめていた。
「あっ・・・和人さん・・・」
「椛・・・いい匂いだ・・・それに・・・とても温かい・・・」
「・・・・・・」
椛は俺に抱きしめられたまま、いやがることもなくただジッとしていた。
そして俺は、眠りにつくまで椛を抱きしめ続けた・・・。