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ゼロと双剣の使い魔 37
「・・・こりゃおでれーた!タダ者じゃねえとは思ってたが。おめ、使い手か!」
「使い手?」
ロイドは首をひねる。
使い手、確かにロイドは剣の使い手だ。
しかし、この剣の言っている使い手とは別の意味じゃないかと思う。
「なんだ、そんなことも知らねえのか。まあいい、俺はデルフリンガーってんだ。てめ、俺を買いやがれ」
「・・・」
ロイドはデルフリンガーを見つめ、しばし考える。
(しゃべる剣か。なんだかエターナルソードみたいだな)
そして、ロイドはルイズのほうを向く。
「ルイズ、決めたよ。俺この剣にする」
ルイズはあからさまに嫌そうな声を上げた。
「えー、いやよ、そんなボロイ剣。すぐに折れそうじゃない。もっといい剣にしなさいよ」
ルイズにとって自分の使い魔として恥ずかしくない剣をという意味を込めていったのだ。
「錆が付いてるなら落とせばいいさ。俺、そういう道具一式持ってるし。それにこの剣、見た目はこんなんだけどかなり丈夫なつくりしてるみたいだし、そこらの剣よりかなり使えると思う」
いろいろと理由を見つけては言っているのだが、ルイズはなかなか承諾してくれない。
ロイドにとっても、今更この剣以外を買うつもりなど毛頭ないのだ。
どうしたものかと悩んでいると、それまで黙っていたタバサが、ロイドの横に来て袖を引いた。
「これがいいの?」
「え?あ、ああ、そうだけど」
それを聞くとタバサはロイドからその剣を奪いカウンターの上に置く。
「タバサ?」
キュルケも友人のその行動に驚きを隠せないでいた。
「これを」
「へ、へい。こいつなら金貨五十で結構でさ」
「・・・何かさっきの剣と値段に差がありすぎないか?」
「こっちとしては厄介払いみたいなもんでさ」
タバサがカウンターに金貨入りの袋を置く。
「ヘイ、毎度ありがとうございやす」
とタバサに頭を下げた。
「ちょ、ちょっとタバサ、どういうつもりよ!人の使い魔に勝手に!」
ルイズがタバサに詰め寄るがタバサは全く動じず、外に向かって歩いていった。
「タバサ、どうして俺に買ってくれたんだ?」
タバサとすれ違いざまにそう聞くと、止まって口を開いた。
「あなたには借りがある」
「借り?」
思い出そうとするが全然思いだせない。
そもそもタバサと直接話をする機会など余りないので借しをつくることなんてないのだが。