8
仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜11
「あ…や…?もしかして、古賀彩!?」
フルネームで呼ばれた彩は三人の方へ視線を移す。
「この前、先輩たちを病院送りにしたヤツだ…」
一気に少年たちの顔から血の気が引く。
「あぁ、アンタらアイツらの仲間?」
そう言うと、彩は先程までギチギチに捻り上げていた少年の手をパッと放した。
「和也は元気?」
そしてニヤリと怯える彼らに笑って見せた。
「ひぃ〜っ」
情けない悲鳴を残すと少年たちは一目散に逃げ去った。
「あ〜ぁ、情けな」
彩は拍子抜けだったようだ。ため息混じりに洋服のホコリを払う。
「大丈夫?良太郎」
彩は自分の背中に声をかける。良太郎はずっと彩の腕を離せずにいたようだ。
「う…うん。」
……………………………「彩ちゃん…また喧嘩したの?」
良太郎は怖ず怖ずと彩に尋ねる。
「この前ね。ほら、事故にあう前。和也にまた因縁つけられちゃってさぁ」
良太郎とは対称的にまるで"いつものこと"のように話し始めた。
彩は喧嘩にめっぽう強く、街の不良達にも恐れられる存在だった。
「喧嘩とか…やっぱり良くないよ。彩ちゃんは、女の子な訳だし…」
先程の調子で良太郎が切り返す。
「あっちが悪いのよ!毎回毎回いちゃもんつけてさ…」
良太郎は彩の言葉に、ただ無言で彼女をじっとみつめるだけだった。
彩は良太郎の視線に困ったようにため息を吐く。「うぅ…分かった…喧嘩は控える…」
段々と声が小さくなりながらも彩は良太郎に答えた。
昔から、良太郎のこの"無言の視線" に弱いのだ。彩にとって良太郎の無言の視線は不良少年たちの睨みの何万倍も威力があった。先程まで不良少年たちを完全に絞めあげていたはずの彩が今では縮こまって見える。
「喧嘩はダメだよ」
「わ、分かったよ…ごめん」
彩は困ったように頭をかいた。
「そうだ!!良太郎に一つお願いがあるの」
彩は話を切り替えるようにパッと顔をあげた。