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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜20
彩が祖父と店番を代わる頃には日も落ちて、すっかり夜らしくなってきていた。
「それにしたって、彩ちゃん頑張り過ぎじゃない?」
ウラタロスが彩の顔を覗き込む。
彩はチョコレートの箱にリボンを結びながらチラリとウラタロスに目をやった…が、質問には答えず作業を続ける。
「休み時間も休みの日もも、寝る時間も削って。なんか、すごい焦ってるみたい」
その言葉に、彩は手を止めた。
「…時間が…ないんだ」
彩がボソリと呟く。それは今までになく低い声だった。
「…え?」
ーガチャン!!
その時だった。乱暴に店のドアが開いた。
「古賀彩みぃっけ」
入ってきたのは前に街で彩が締め上げた不良たちと同じような少年三人組だった。
「この前はウチの仲間が遊んでもらったみたいだね」
ニヤニヤしながら彩に近付いてくる。
「それで?」
彼らの仲間…仕返しか?彩は作業の手を止めずに声だけ返した。
「ちょっとお礼も兼ねて挨拶してこいって…和也さんが」
そういうと少年の一人が棚に並べてある焼き菓子をバラバラと払い落とした。
「!!」
ウラタロスは落とされた焼き菓子を見て彼らを睨みつけた。それは、一つ一つが彩と、彩の祖父が朝早くから夜遅くまでかかって作り上げたものということを、知っていたからだ。
彩はその音を聞くとゆっくりと彼らの方を振り返った。顔付きは冷静だったが、目は今までに見たことのないくらい鋭かった。
少年は彩に近づいて、襟口を掴みあげるとニヤニヤして笑った。
瞬間、ウラタロスは少年たちに向かって…行こうとしたが、彩が彼の前に手を置いて制止する。
「…彩…ちゃん?」
「あれあれ〜?この前みたいに反撃しないの〜?」
少年は彩の顔を意地悪くにやけた顔で覗き込んだ。
「ここはお店。お菓子買うとこなの。ケンカとかゴタゴタを起こすとこじゃない」
彩は怯むことなく彼らを見つめると真っ直ぐな言葉をぶつけた。その瞳に芯の強さが見える。
「へぇ、じゃあ俺らが何しても反撃なしか?この辺じゃ、無敵の古賀彩もこの店じゃ形無しだな」
少年たちは彩を嘲って笑った。これからどうしてやろう。そんな考えが見え隠れする笑い。彩はそれをじっと見つめるだけだった。