もみじ　　ハッピーエンドじゃないと許せない　２４

「・・・俺のことを、好きと言ったな？」
「あの・・・好きかも・・・しれない・・・です・・・」
「そうか・・・」
好きかもしれない、か・・・。
「・・・椛、お前は自分の立場がわかっているのか？」
「・・・・・・」
椛は、身体をビクッと震わせた。
「・・・わかっています・・・でも・・・」
椛は潤んだ瞳に決意を込めて、俺をまっすぐに見つめた。
「・・・・・・」
俺は考えた。
もし、その好きという感情が俺の行為によって作られたものだとしたら・・・。
椛は、俺によって性の快楽を教えられた。椛はただ、快楽を与えてくれる存在として俺を欲しているだけなのかもしれない・・・。
「椛、おまえは自分の立場を理解した上で俺のことを好きだと・・・好きかもしれないと、言うんだな？」
「はい・・・」
椛は、コックリとうなずいた。
「なら・・・おまえは、これから先俺の相手をしてもかまわないということか？」
「・・・・・・」
椛は、俺の問いかけに戸惑いを見せた。
しかし、すぐに先ほどの決然とした目に戻って口を開く。
「もう・・・そういうことは・・・したくありません・・・」
その言葉を口にした椛の表情に、出会った頃の何もかもをあきらめていた娘の面影はどこにもなかった・・・。
「・・・俺の命令に逆らうのか？」
「・・・・・・」
「どうなんだ？」
「・・・すみません・・・でも・・・」
あの何事にも流されるだけの椛が俺の命令に逆らおうとしている・・・。
椛も変わったものだ・・・いや、椛もやはり本来はどこにでもいる普通の娘なのかもしれない・・・。
周りの人間が椛に全てをあきらめることを強要していただけなのだ。
あきらめること・・・それが椛に残されていたたった一つの自分を護るすべだったのだ。
「・・・そうか、俺の命令が聞けないのか・・・」
俺のもとから椛を自由にすること、それが椛の為なのかもしれない・・・。
そう、椛もそれを望んでいるはずだ。
しかし・・・そんな考えと同時に、俺の頭の中をもう一つの想いがよぎったが、俺はそれを振り払うように椛にむかって言った。