もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない(ユグドラシルさん作) - 5 | ケステーズ - 二次小説・SS投稿

サイトトップ >> もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない(ユグドラシルさん作) >> 5

もみじ  ハッピーエンドじゃないと許せない 6

午前中の授業が終わり、俺は背伸びをしてひと息をつく。この時ふと思ったのは
・・・・・・椛は、どうしているだろうか?
だった。気になり椛を探してみる。するとプールのほうで何か音がした。今は昼休みで授業は終わっている。いるとしたら勤勉な水泳部の部員が練習でもしているのか。そう思い覗いてみるとそこには誰もいないプールサイドを椛が1人きりでビート板を抱えて歩いていた。
「椛」
俺は用具置き場の前に立って椛を出迎えた。
「・・・・・・和人・・・さん」
椛は、濡れて滑りやすいビート板が腕からこぼれおちそうになるのを懸命に支えている。
「もう昼休みだぞ。こんなところでなにをしている?」
「・・・あと・・・片づけ・・・を・・・」
「1人でか?」
「・・・・・・」
椛はこくりと小さくうなずいた。
そのたったひとつの動作でさえ、椛には勇気のいることだろう。
「他の当番はどうした?なぜお前1人でやってるんだ?」
「・・・・・・」
椛は答えない。ただ、無言で目をそらすだけだ。
「・・・そうか」
椛は他人と関わろうとしないため、守ってくれる友達もいない。いいように使われているのだろう。
「・・・貸せ」
「あっ・・・」
俺は椛の手からビート板を奪い、用具置き場に置いた。
「お前だけにやらせていたら、日が暮れてしまいかねんからな。・・・今回だけだぞ」
「・・・はい」
椛がビート板を拾い上げ、俺の腕に積んでいく。
「いやなことはいやと言えるようになれ」
「でも・・・」
椛がチラリと俺を見る。
「もちろん、俺の命令には『いや』と言わせないがな」
「・・・・・・」
それから俺たちは、無言で作業を続けた。

昼休みももう終わりだ。俺は早めに席について午後の授業が終わるのを待った。
クラブに所属していない俺は、とくにすることもないため、鞄を持って教室を出ることにした。
校門のところに出ると、迎えの車が来ていた。
「お疲れさまです、和人さん」
その中から静流が出てきてぴょこんと頭を下げた。
「ああ・・・」
小さい頃は車で送り迎えされるのが嫌だったが、自分は他の人間と違って当たり前だと理解してからは、気にならなくなった。
椛はまだ慣れないようだが・・・。

ランキング

検索

投稿・ユーザ登録

プライバシーポリシ - 利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス