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仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜
エピローグ?〜仮面ライダー〜
荒岩省吾が初めて人を殺したのは24年前のことだった。
当時、17歳だった荒岩は同級生を自殺に見せかけて殺害した。
動機は特になかった。
その同級生を恨んでいたわけでも、気に入らなかったわけでもない。
ただ、『人間が死ぬ瞬間を見たい』という単純な好奇心に後押しされ行ったことだった。
だがその行為が終わった後、荒岩に訪れた感情は『達成感』でも『満足感』でもなかった。
とてつもない『恐怖』が彼の心を支配した。
もう二度とこんな事はすまい…そう決意した翌週には二人目を手に掛けていた。
再び去来する『恐怖』。
怖くてたまらない。だがその『恐怖』が荒岩を凶行へ駆り立てた。
男、女、老人、子供、時には有名な歌手や俳優、政界の大物…何人殺したかは覚えていないがその度に口に出せないような『恐怖』を荒岩は感じて来た。
その反面、荒岩は周到な男だった。臆病と呼ぶ方が正しいかもしれない。殺害の際には自身の痕跡を完全に消すことにのみ専念し、警察の目をかいくぐった。
そんな荒岩に転機が訪れたのは彼が28歳のころだった。
丁度殺人を終え、自身のアパートでそのニュースを見ながら震えていた時だった。
ドアの叩く音が来客を告げた。
荒岩を訪ねて来たのはある組織の代理人を名乗る初老の男性だった。
訪問動機は単純、即ちスカウトだった。
荒岩を組織の一員として、迎え入れたい…と言うのだ。彼は荒岩の行為を誉め讃え、こう言った。
『自分達は人類を守り、管理している。その為には人類の天敵となる存在が必要なのだ。人類の未来を矯正し、より良い方向に進ませるために協力してほしい』と…。
荒岩は即座に快諾した。彼らは荒岩の個人情報、更には被害者の数までを正確に把握していた為に抗うことは出来なかったのもあるが、何より心を惹かれたのは組織の存在理由だった。
『人類を守り、保管する』
殺人を除けば、荒岩は高い正義感の持ち主だった。その言葉を聞いた瞬間、自分はその為に生まれてきたのだと直感した。
『恐怖』を超越した『幸福』を感じた。自分を認め、必要としてくれる者がいることに。
そして荒岩は改造手術を受け、新しい名前と共に組織への忠誠を誓ったのだった。