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ヒグラシのなく頃に(消滅編其の六十)
「酒じゃねぇか!これ」
「・・・いや・・その・・」
目をそらす・・ノアサ・・まさか・・
「お前・・女装・・もしかしてこんな物のために・・」
「こんなもの・・だと・・」
ノアサの目つきが変わった・・
「酒のわからねぇガキがわかったような口きくんじゃねぇえぇ!あのすばらしい白ワインを飲んだ時のふわっと広がる果物の高貴な香り!ビールを飲んだ時の苦味と旨みが合わさったあの喉ごし!全てを忘れさしてくれるような!あの!恍惚感!すべて酒によってしか味わえん・・いや味わうわけにはいかんのだ!いいか!」
そう言って俺の肩を強く握る
「人は昔から酒によって癒され酒によって、
生かされてきたのだ!かのナポレオンしかり!かの豊臣秀吉も討ち入りする時は!・・」
こんな奴がいるから・・飲酒運転がなくならない・・そんな気もしたが・・とりあえず反論できそうな・・雰囲気じゃない・・
「酒!女!そして富!これが男の欲しがる三大原則だぁぁぁ!」
そう言って吼える・・もう・・自分の格好・・わかってねぇだろ・・こいつ・・
「はぁ・・はぁ・・わかりましたよねぇ・・前原さん・・」
「ああっ、ああ、」
「大事に・・運んでくださいね・・」
そう言ってダークな笑顔を向ける・・俺、もしかしてとんでもない危険人物と一緒にいる?
「わかった・・言うとおりにする・・」
「わかれば・・いいんです・・・」
にこっとさっきまでの気弱なノアサが戻ってきた・・
「さっ、さっさと運んじゃいましょう・・」
仕方なしにビニール袋を運ぶ、
「あれっ、あそこの店やけに込んでますね?」
見ると・・そこはセブンスマート・・ソウイエバ・・!背中に戦慄が走る