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ヒグラシのなく頃に(消滅編其の二十六)
・・・んっ?・・・
タッパーを受け取った後も彼女はじっと・・・俺の方を見ていた・・・
まるで・・俺と言う人間を・・・すべて見られてるような・・・そんな気がする目だった・・
「なっ、何・・?」
「どうして・・いつも・・ネコさんは・・・怯えてるですか?」
「えっ・・・・」
一瞬何のことかわからなかった・・・
「いつも・・どうしてネコさんはそんなに怯えてるですか・・・何もないところでも・・」
ネコさん・・・まさか・・俺のことか・・
「仲間のネコさんたちは・・一生懸命・・みぃみぃ・・みぃみぃって・・呼んでくれてます・・・どうして・・その声にも・・・怯えてるですか?」
・・・言葉を失った・・・
「ネコさん・・それじゃ・・ずっとお日様の当たるとこ・・出てこれません・・・ずっと一人でじめじめした床下・・・寂しすぎます・・・ネコさんかわいそうです・・・」
ひざから力が抜けてくる・・・
「ネコさん・・どうして・・・呼んでる仲間に爪たてるですか・・・」
気が付くと・・完全にその場にうっ伏して・・・体から完全に力が抜けていた・・・
「仕方・・なかったんだ・・!また・・同じことやらかすに決まってんだ・・・!だったら・・誰とも関わらないほうが・・・良いに決まってるじゃないか・・」
くそっ、俺の口とまれ!
涙が溢れ出してくる
「俺は・・僕は・・僕は要領よくないんだ!・・みんなみたいにうまくできないんだ!だから!だからあの時だって・・・うううぅ・・ぁああああ!」
もう雨だか汗だか涙だか鼻水だか分からないくらい顔がぐしゃぐしゃになっていた・・
あの時・・の事なんてこの子が知るはずもなかった・・・けど・・もう何からどうしていいか・・わからなかった・・・
「ネコさんかわいそ・・かわいそです・・」
頭に何か・・暖かい感触を感じる・・彼女の手・・だろうか・・・頭をなでてるみたいだ・・
今はそれだけでも安心する・・・・少しだけ・・少しだけあの時のことを・・忘れられる・・
・ ・よく考えたら・・自分より小さい女の子に頭をさすられて泣いてる男なんて情けなさすぎだろうって・・思う・・だけど・・あの苦しみが少しでも軽減されるなら・・そんなこと・・気にもならなかった・・・。