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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜19
『ウラタロス!!』
ふと、聞きなれた声で我に帰る。
…良太郎…
「起きてたの?」
表情をいつもの調子に戻すと良太郎に言葉を返した。
『ウラタロス!何やってるの!?』
目覚めたばかりの良太郎は困惑気味だった。
彩と肌が触れ合う寸前…ウラタロスはゆっくりと彼女を自分から離した。「ごめんごめん。冗談だって。」
ウラタロスはため息を吐きながら笑って見せた。
「どうせ僕には何にもできないからね。」
…そう、実体化してないイマジンなんて自分の力でこの時間に存在すらできないんだ。そんなこと痛いくらい分かってる。だから、女の子と遊ぶ時だって、いつだって、人間とは一定の距離を保ってた。感情だってそこにいれるだけ無駄なんだ…どうせ、手に入らないものだから…
「…そういう意味じゃ…」良太郎は言葉に詰まった。
「平気平気。それを承知で良太郎と一緒にいるんだから。今後は身分をわきまえて行動しますよ」 そう言うと、ウラタロスは彩を手すりに寄りかからせて、自分の上着をかけてやった。
「平気平気…」
彩の寝顔を見ながら、ウラタロスはその言葉を繰り返していた。
…………
彩が目を覚ますと"浦太郎"…もとい、ウラタロスが横で先程まで自分がやっていたリボン作りをしていた。
教えてもいないのに、キレイにふんわりした形のリボンをいくつも作っている。コイツ飲み込みが早い…な。寝起きのぼ〜っとした目でウラタロスを眺める。
ふと、自分の手元に目をやる。彼の上着だろうか…自分が寝ている間にかけてくれたようだ。
彩は考え込むようにその上着をじっと見つめた。「私、どれくらい寝てた?」
久しぶりのしっかりした睡眠…頭はすっきりしていたが、目覚めたばかりの体は少しだるい。彩はのろのろと体を起こすと目をこすった。
「30分くらいかな…」
ウラタロスはリボンを作りながら言葉だけを彼女に返した。
「えっ!??やばっ!!」
彩は急に焦り出すと、下へ降りる階段へと向かった。
「ちょうど良かった。彩ちゃんが起きたら店番交代してくれっておじいさんが。」
にっこり笑いかけるとウラタロスは先程より、さらに山積みになったリボンのカゴを彩に手渡した。
…その時、手すりの影で何かが身を潜めた。