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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜41
「じゃっ!!お店帰るわ!!」ポンと良太郎の頭を軽く撫でると彩は出口へと向かう。
「まだ話は…!!」
帰ろうとする彩をコハナが止めようとした…が、それを良太郎が制止した。
「…良太郎??」
「彩ちゃんなら…大丈夫。…約束…してるから」
良太郎は彩を信じて今回の件は彼女に任せることにしたのだ。
「……大丈夫…」
その手は震えていた。
…約束…良太郎は彩のその言葉を信じていた。
…信じたかった。
たとえ、彼女の言葉に不安の色を感じ取っていたとしても…
心配そうな二人を後目に、彩は出口辺りでふと立ち止まった。
「ウラ!!」
そして、振り返ると彩は一番奥にいるウラタロスに声をかけた。
「…え??」
ウラタロスは不意な呼びかけに落としていた視線を上げる。
「明日遅刻すんなよ」
軽く微笑んでみせると、彩は扉の向こうに消えていった。
それに答えるようにウラタロスは軽く手を振って見せる。
…彩の姿が見えなくなると、その手を組むとウラタロスは考え込むように再び視線を落とした。
「…時間…か」
彩が降りると、電ライナーはゆっくりと動き始めた。
「彩…本当に良かったの?」
「何が?」
ぴょん吉の質問に表情なく聞き返す彩。
「何がって…約束よ!!」
「…約束だもん。しょうがないじゃん…」
「…それにしたって………良太郎ちゃんにあんな"嘘"つくなんて…」
「"あの約束"のためだもん…」
走り出す電ライナーを見送るように、彩は遠くに視線を送る。
「それに、本当のこと言ったら良太郎怒りそうだし…」
彩は苦笑いしてみせる。
「あ〜、びっくりした」
走り去る電ライナーを挟んだ向こう側で気の抜けた声が響く。
「まさか。あれ。野上良太郎とお前が知り合いなんて。俺、今、すごく驚いてる気がするよ…」
彩はゆっくりと視線を電ライナーの向こうへと移す。
「俺、そういう顔してるだろ?」
…ニヤリとつり上がった口元、面白いものでも見るかのように細まった瞳、黒髪…
「…久しぶりだね、カイ」
電ライナーが走り去った後には、カイが不敵な笑みを浮かべていた。