10
もみじ ハッピーうエンドじゃないと許せない 11
放課後、俺は教室を出ると保健室に行った。
別に俺がケガをしたというわけではない。椛がまた授業中に貧血で倒れたらしい。
俺は不在というプレートのかかったドアを無造作に開けた。
俺は、衝立で隠されたベッドの方に向かった。ベッドの上では、椛が体操着のまま横になっている。
「椛・・・」
「・・・・・・あっ・・・和人さん・・・」
俺が声をかけると、眠りが浅かったのか、それともただ目をとしていただけなのか、椛はすぐに目を開いた。
「また貧血か?」
「はい・・・すみません・・・」
「薬を使うよりも、もっと体力をつけた方がいいんじゃないか?」
俺は、椛の顔を覗き込んだ。顔が青く見えるのは暗めの照明のせいだけではないだろう。
「まだ顔色が悪いみたいだな。もう少し休んでいろ」
「・・・お帰りになるんですか?」
椛が上体を起こしながら聞いてきた。
「ああ・・・いや、まだ用がある。それがすんだら呼びに来る。それまでおとなしく寝ていろ」
「・・・はい」
答えた椛は微笑んでいるように見えた。
なぜか俺は無性に椛をなでてやりたいと思った。
それは行動に出ていた。
「あっ・・・ん・・・」
椛は最初驚いたようだったが次第にはにかんだように見えた。
心なしか、椛の顔に血の気が戻ってきたように感じた。
「・・・あ」
俺は部屋を出て行こうと椛から手を放した。
すると椛は、どこか名残惜しそうな顔をしているように見えた。
「・・・・・・」
しばらく俺は考えると椛が使っているベッドの端に腰掛け再び椛をなではじめる。
「え・・・あ・・・和人さん・・・用事は?」
椛は戸惑っているようだが、その顔はやはり心なしか嬉しそう見えた。
「まあ、いいさ。別に大した用というわけでもない。それより椛、頭なでられてうれしいか?」
「・・・!」
椛は顔を赤くして何か言おうとしているようだが言えないでいるようだ。
「椛、遠慮せずに言っていいんだ」
「・・・は・・・い・・・」
「そうか、なら帰るまでもう少しこうしていてやる」
「和人さん・・・ありがとう・・・ございます・・・」
椛はそういうと目をつぶりしばらく俺になでられ続けた。
・・・やはり俺はおかしくなってしまったようだ。
以前の俺は人をなでて・・・こんなに心地いいと思ったことなんてない。
・・・いったいなんだというんだ