12
ひとつ前の話 | ひとつ次の話
作者:SS投稿作品用
虚無と無限の剣製者14
「あんた『火』属性だもんね」
ルイズが苦々しい声で言った。
「ええ、微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね」
キュルケはこれ見よがしにその豊かな胸を誇示している。
「!!…あんたみたいにいちいち色気振り撒くほど、暇じゃないの」
キュルケの視線に気付いてか、ルイズが胸を張る。
しかし、見事にペッタンコだ。例えるなら山脈と平野である。
キュルケは、ルイズに対して嘲笑うかのような笑みを浮かべていた。
俺は何故か、あの『あかいあくま』を思い浮かべてしまっていた。
一瞬、動揺してしまったのは秘密だ。
「あなた、お名前は?」
「……衛宮志遠」
俺は名前を変えて名乗った事を後悔していた。よくよく考えればここは異世界、『士郎』が男の名前だったとしても問題は無かったのだから。
キュルケが怪訝そうに
「エミヤシオン?随分と変わった名前ね」
「まあね…」
俺は曖昧に答える。
「じゃあ、お先に失礼。ルイズが男の子を召喚してたら、からかってやろうかと思ったのに。残念」
言うやいなや、炎のように赤い髪を翻し、颯爽と去っていった。
(…一応男なんだけどな。何故か体は女だけど)
ひとつ前の話 | ひとつ次の話