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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜59
「良太郎!!」
彩は必死に体を起こして彼の襟首を掴んでいる和也の腕にしがみついた。
「アンタらが用あるのは私でしょ?!良太郎には手ぇ出すな!!」
息切れ混じりの声で必死に和也を睨みつける。
その言葉に一瞬、和也の動きがとまった…
今までの騒ぎが嘘のように、空白の時間ができる。周りを取り巻く少年たちも何かを感じ取ったように固まってしまった…今までと何かが違う…
「…修との約束が大事…」
その空気を破ったのは和也自身だった。
今までの行動と合わない言葉…
必死に彼の腕にしがみついていた彩も一瞬動きを止めた。
「…え…?」
「…守りたいのは、か弱い良太郎…」
何のことを言っているのか分からなかった。
…ただ、一つ分かったのは、今まで無機質な笑顔しか浮かべなかった和也の表情に、それまでにはない感情が浮き出てきたことだった。
「…アンタはいっつもそればっかり…本当…ムカつく…」
内に秘めていた感情を絞り出すような…掠れた声を吐き出した。
和也の表情に目を奪われていた彩はそこにできた一瞬の隙を突かれた。しがみついていた和也の右手は"ぶん"と音を立てて一振りされると、思いも寄らない力で彩は後方の地面に投げつけられるように尻餅をついた。
それと同時に良太郎が小さな悲鳴を上げる。
「…ぅあ」
それにとっさに顔を上げた彩の目に飛び込んだのは良太郎の首をきつく絞めている和也の腕だった。
良太郎は自分の首を絞める和也の手を必死で押さえるのが精一杯の抵抗ようだ。
「良太郎!!!」
彩はすぐに体制を立て直そうと、右手で体を起こす…が、
「?!」
その右手に力が入らない…
…まさか…
顔を歪ませる良太郎から自分の右手に震える視線を移す。
"ドクン"
…嘘…でしょ…
"ドクン"
脈打つ目眩
…こんな時に…
彩は震える左手で、やっとのことで右手を押さえた。
不安を振り払うように、彩は勢いをつけて立ち上がる
「…うっ」
…が、左足に激痛が走り、ただ少し腰を浮かせただけで、またその場に座り込んでしまった。