10
仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜13
…甘い香り。
白と木の質感を基調にした明るい雰囲気。お店の中央には可愛らしいケーキが並ぶショーケース。壁に取り付けられた棚や、店内に並ぶ小さな机には小さな箱にかわいいリボンのついたチョコレートの詰め合わせが並んでいる。
ここ、パティスリー・ファミーユでウラタロスのバイトは順調(?)に進んでいた…
「…それにしたって名前がねぇ」
ウラタロスは溜め息混じりに頭を抱える。
☆回想☆
「名前?」
良太郎は動揺して一歩後退した。
「そっ!!親戚のくせに名前も知らないの?」
彩はうろたえる良太郎にさらに迫る。
「え…っと、、うら…うらたろ…うらたろう!」
☆回想終了☆
「センスないよね」
ウラタロスはお菓子の箱にリボンを巻ながらため息を吐く。
"浦太郎"か…ウラタロスに続けて、女の子に全くモテなさそうな…なんか、イモっぽい名前…こんなんじゃ釣れる女の子も釣れないでしょ。
「ごめんね、彩ちゃん、僕がこんな名前なばっかりに、女の子たち(お客さん)も集まりが悪いよね」
ウラタロスはちょうど奥からケーキを運んできた彩の肩を抱き寄せてため息をもらした。
「浦太郎君…名前はどうだっていいんだけさ、君目当ての女の子ばっかり集まっちゃってるんだけど」
店内に目をやると、お店から溢れんばかりのお客さん(女性のみ)がウラタロスに熱い視線を送っていた。
「ま、買ってくれるんならそれでいいんだけどね…」
自分の肩を抱くウラタロスの手を簡単に抜け出すと、彩はショーケースにケーキを並べ始めた。
彩の狙いはウラタロスのナンパのテクニック。彼の魅力に釣られてしまったわけではないようだが、それを餌に客数を増やすのが目的らしい。
「…これならいけそう」
彩がぼそりと何かを呟いた。
「…え?何?」
「ううん、何でもない」
その言葉に反応したウラタロスに笑ってごまかしてみせると、彩はさっさと店の奥に戻ってしまった。
「…なんだろ」
ウラタロスは彼女を見送ると首を傾げた。