仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜(あいじさん作) - 63 | ケステーズ - 二次小説・SS投稿

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仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜



あすかは少し戸惑っていた。
目の前に居るモデルに対して中々筆が進まない。もし自分が生粋の芸術家であれば狂喜しそうな程の逸材ではある。
しかし、ソレを描き尽くすには少々、技術と情熱が足りないように思えた。無論、自分の才能は信じている。だがそれを足してもまだ埋まらない差のような物がその女性にはあった。
「…出来ました」
それを描き上げた時、いつも感じない重い緊張感があすかを襲った。
自分の絵に自信はある。
だがもしこの女性が気に入らなかったら…それは、生まれて始めて覚えた感情だった。
女性は渡された絵をじっくりと眺めると、あすかの顔をじっと見詰めた。
「今まで色々な画家が私をモデルにしてきたわ…でも正直に言うとどれも気に入らなかった…誰も彼も、私を見てはいない。上辺だけの姿を見ているだけだった」
静かだが、はっきりとした口調で女性が呟いた。
「…でも不思議ね。お嬢ちゃんの描いた絵には私がいる。今までのどれよりも…」
女性の目に涙が浮かんだ。呆気にとられたあすかが惚けていると、女性は涙を拭ってあすかに微笑んだ。
「気に入ったわ。コレ頂いてもいい?」
その言葉に、あすかは大きな達成感を覚えた。これも今までにない感情だった。
スケッチブックから絵を切り離し、女性に手渡す。その時、女性の薬指が目に入った。
「指輪…」
「あぁ、これ?夫の形見なのよ。私なりのエンゲージリングのつもりなんだけど」
内心あすかは驚いたがすぐに思い直した。確かに結婚しているようには見えないが、自分の母親も娘がいるとは思えない容姿だからだ。
「そうだ。記念に貴女のお名前教えてくれない?」
彼女が財布を取り出しながら言った。
「私は…あすか。緑川あすか」
「そう…あすかさん、ね。なんで貴女は路上で似顔絵を?貴女には才能がある。ちゃんとした勉強をすればもっと伸びるはずよ」



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