仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜(あいじさん作) - 45 | ケステーズ - 二次小説・SS投稿

サイトトップ >> 仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜(あいじさん作) >> 45

45

仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜

終焉?

「雨…」
マグカップを拭く手を止め、立花は呟いた。
客は一人もいない。
ルリ子やあすかも仕事に出掛け、こんなに静かな時間は滅多にない。
ただ、立花はそれを持て余していた。
「客が来ないのはいつものことだけどさ…寂しいねぇ…」
そんな独り言も、雨に紛れて消えていく。
そろそろ店仕舞いしようかと、立ち上がった時だった。
ガウベルの音とともに扉が開いた。
「…いらっしゃい」
ただ一人、ズブ濡れの男が入って来た。
少々煤けたような風体だが、その容姿は美しく、まだ汚れを知らない天使にも思える。
そこまで考えて立花は自分が間違っていることに気付いた。
この男は天使じゃない…その瞳に暗い、嫌な色が広がっている。
「…ご注文は?」
男は答えない。
『Amigo』にどうしようもない静けさが広がった。
「お客さん…注文がないなら、私に任せて貰えますか?」
立花の言葉に、男は静かに頷いた。
立花は慣れた手つきで作業を始める。
(さて…)
立花はコーヒーを作る時いつも考える。
一番重要なのは客が美味いと言ってくれることだ。
技術や材料はその後でいい。どんな仏頂面の奴でも『美味い』と言うようなコーヒーを入れる…それが立花の『信念』であり唯一の『ルール』だった。
「どうぞ」
立花は出来上がったコーヒーを差し出す。
男は僅かにそれを口に含むとゆっくりと飲み込んだ。
「……美味い」
小さな声だったが、立花の耳には確かに聞こえた。
「何があったか知らないけどよ、んな暗い顔してたら運が逃げちまうぜ。もっと笑え」
「友達だ…」
立花の言葉に男が僅かに反応する。
「俺の友達は…俺のせいでいなくなっちまった…」
「…いねぇ奴を忘れろとは言わねぇ。しかしな、あんたが前を向けばそこには仲間がいる。例えそいつが敵だったとしても、な」
少し説教臭くなった事を立花は反省した。
男はゆっくりと立ち上がり、立花に言った。
「ごちそう様」
その表情は本当の天使だった。


ランキング

検索

投稿・ユーザ登録

プライバシーポリシ - 利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス