ヒグラシのなく頃に（消滅編其の九十一）

（なんやて！もう一度言え！今どこにおるんや！）
（わからん・・暗いねん・・ここ、ごっつう暗いねん・・怖いわぁ・・助けて・・兄貴ぃ）
（ツーツー）
（なんや・・一体何が起こってん？）
そうや・・あの・・結婚相手が来る日やった・・わしは・・一通り祝福したあと・・あのアパートを離れるつもりでいた・・そう思って・・荷物をまとめてたんや・・
今からのアイツに俺は必要ない・・そんな時かかってきたのがその電話やった・・
弟は・・突然消えた・・電話一通きりを残して・・・探したんやで・・必死に・・警察にも電話したし・・探偵まで雇って・・俺も探した
でも・・どこに行ったのかもわからへん・・怪しいのは結婚相手やった・・アイツの職場・・
行き着けの飲み屋・・どこにもアイツの結婚の「け」の字もでできやせんかった・・
（えっ？安藤さんが結婚？聞いてませんけど？）
（安藤さんって結婚するん？）
誰や？一体アイツは誰を紹介しようとしてん？
ただ・・忘れ去られたように・・・
部屋だけが残ってん・・しょうもない・・こんな部屋だけあってもしょうもないんじゃぁ！
浩太・・お前どこ行きよったん！？わざとやろ・・どっかに隠れてんやろ・・？
なぁ・・ふざけてないで返事してくれぇ・・浩太ぁ・・
荒れとった・・訳がわからんごとなっとった・・あの部屋もどうしていいのか・・なんにもわからんかった・・雀荘に行くことが俺の大半になった俺にアイツは突然現れたんや！
（俺も勝負に混ぜてください・・退屈はさせませんから）
（へぇ、ボウズお兄さんたちと勝負する気かい？）
あれは・・はは帰って来よった・・あのバカ帰ってきよった・・遅いんや・・
（これで俺の勝ち！お金はこれだけですね・・じゃあ）
行くな！もう行くな！兄ちゃんが！部屋用意しとんねん！帰ろう一緒に帰ろう・・
（ちょっとまったぁー！お前のその金取り戻す方法が一つだけあったでぇ！）
（へぇ・・掛け金も何もないのにどうやって取り戻すんです？）
「お前を子供にしちゃる！それでチャラや！」
フライパンに乗った食材が月の弧をなぞるように舞う
「えっ、宗さん今なんて・・」
「黙って見ときぃ！ごっつぅうまいもん食わせてやるさかいなぁ！」