34
仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜
狂宴?
雨が降り注ぐ。
だが、その一雫の水滴がコンクリートの大地を濡らすより速く、疾風は駆けていく。
緑川博士の遺産『サイクロン』
そのスペックは猛ですら驚愕するものだった。
(確かにモンスターバイクと呼ぶにふさわしいな…上げれば上げただけスピードが上がる。この加速は普通の人間にはとても耐えられないだろう…)
白いボディに赤いラインが模されたシャープな車体。そのスピードと名前を誇示するように付けられた六本のマフラー。
その全てが『疾風』の名に恥じない。
(だが問題は俺にある…俺が『サイクロン』を使いこなせなければ意味がない…)
猛は一抹の焦りを感じていた。
だがその思考は次の瞬間遮られた。
「!?」
猛はサイクロンを止め、前方を睨んだ。
凄まじいまでの殺気。
猛は息を飲んだ。
雨露を破り最初に現れたのは毒蛇だった。
荒々しい毒蛇(コブラ)のマスク。
そして行き場を無くした殺気が毒々しい紫のプロテクト・ギアから滲み出ていた。
「出たなショッカー…」
コブラのマスクは片手を挙げ、合図らしきサインを送る。すると全身を黒い装束に包んだモノたちが現れた。
今までの戦闘用改造人間とは違う、まるで『個』を持たない機械の人形のようだった。
「本郷猛…排除する」
コブラの指が動く。それと同時に異形たちは群れをなすように猛に迫りかかった。
猛はサイクロンを駆けるとその群れに向かって突撃する。その腰本にはベルトバックルが装着されていた。
「…変身!」
サイクロンを介して送られてきた風がバックルに吸収され、そのエネルギーがプロテクト・ギアとなり、猛の身体を覆った。
そして仮面を被った猛はサイクロンの速度を上げ、跳躍し、コブラに迫った。
コブラは腕を上げ、サイクロンの前輪を弾くと同時に猛を引きずり下ろした。
「ぐうぁ!?」
サイクロンはコンクリートを擦るように滑り、猛はその大地に引きずり落とされた。