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もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない 23
あれから数週間がたち、いつの間にか椛のいる生活が俺の新しい日常となっていた。
「和人さん・・・」
そんなある日の放課後、車に乗ろうとしていた俺を椛が呼び止めた。
「なんだ?忘れ物でもしたか?」
「いえ・・・あの、少しお散歩しませんか?」
「ほう・・・」
椛が、こんなふうにわがまま(というほどでもないが)をするのは珍しい。
「・・・いいだろう」
椛が、どうして急にこんなことを言い出したのか興味を持った俺は、つきあうことにした。
俺が車に待っているように言うと、椛は先に立って歩き出した。そして、椛は俺を学園から少し離れた小高い丘の上につれて行った。
「こんな場所があったとはな・・・」
高さは学園の屋上とさして変わらないが、なかなかの眺めだ。
何より、緑が多いのがいい。
「どうですか、ここ・・・?」
椛は、なぜか恥ずかしそうに俺の後ろでモジモジしている。
「ああ・・・なかなかいい場所を知ってるな椛」
「・・・よかった」
椛はホッとしたような表情になった。
「・・・和人さんと出会う前は、1人でよくここに来てたんです・・・私・・・」
「・・・ここは、椛の秘密の場所というわけか」
「・・・・・・」
椛はうなずいた。
「・・・・・・」
・・・しかし、なぜ椛は俺をここにつれてきたのだろうか?
それに、一体どんな意味があるのか・・・。
「・・・好き、かもしれません」
「えっ?」
椛の突然の言葉が俺には理解できなかった。
「私・・・和人さんのことが・・・」
椛は真っ赤な顔でそう言ったが、最後のほうは聞き取れないほど小さい声になっていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺と初めて会った時の無表情な少女は、もうどこにもいなかった。
いま、俺の前にいるのは・・・。