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虚無と無限の剣製者12
洗濯を終えるとちょうど、少女も最後の洗濯物を洗い終えるところだった。
「すいません、手伝って頂いて…。私の仕事なのに…」
少女がペコリと頭を下げる。
「気にしなくていいよ。こっちも洗濯しなきゃいけなかったしね」
微笑みながら言う。
そこで少女は、はっと思い出したように
「あっ…。すいません、朝食の準備をしなければならないので、失礼します」
「うん。オ…私は、衛宮志遠だ」
慌てて言い直す。
「変わったお名前ですね…。私はシエスタです。ではシオンさん、後ほど…」
「ああ…、また…」
シエスタは走り去っていった。
どうやら朝食が近いらしい。さてと…
「ルイズを起こしにいきますか」
部屋に戻ると、ルイズはまだベッドで丸くなっていた。
「(よく寝てるな…)」
微笑ましいくらい安らかに眠っている。
しかし…
「ルイズ、朝だ。起きろ」まずは軽く揺すって呼び掛ける。
「ふみゅ…?」
ルイズが奇妙な声を出す。反応はしたが、目覚める気配はない…。
「とうっ!」
実力行使あるのみ、と布団をひっぺがす。
「ひぁっ…?」
「起きた?」
目覚めたばかりで、焦点の定まらない目をしているルイズに話しかける。
「…あんた誰?」
「(おいっ!!)」
忘れているらしい。
「衛宮志遠。召喚したのは誰だったかな?」
「ああ…私が昨日召喚したんだったわね」
ルイズは士郎に命じる。 「服を着せて頂戴」
「は?」
士郎は自分の耳を疑った。。
「ナンデスト?」
「だから、服を着せて頂戴」
だるそうにネグリジェを脱ぎ、下着に着替えるルイズ。
士郎は咄嗟に顔を背ける。
「自分で着替えたらいいんじゃ…?」
言い訳するがルイズは聞く耳を持たず
「平民のあんたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいるときに自分で服なんて着ないの」
「そんなこと言われても…。第一、俺はこの世界の人間じゃないし」
「どうゆうこと?」
ルイズが聞いてくる。
「まんまだよ。別の世界から来たんだ」
「別の世界?」
「月は一つしかないし、昨日も言ったけど魔法使いは四人しかいない」
「信じられないわ」
「(いきなり別の世界から来た、なんて言っても信じないよな)」
「大体、四人って何よ」
「俺の世界には『魔法』は五つしかない」