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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜47
〜彩たち〜
「あ〜ぁ…弱すぎじゃない?」
彩の首を締め付けるカイの手に力がこもる。
カイは苦しむ彩の表情を楽しむかのように口元に笑みを戻した。
「俺、弱いヤツに指図されんの嫌いなんだよね。反撃もできないくせに、デカいことばっか言ってんじゃねぇぞ、凡人」
彩は抵抗もできず、微かに開いた瞼でカイを睨みつけるだけで精一杯だった。
「ほら、何もできないだろ?凡人はおとなしく…」
そう言いかけたカイの動きがピタリと止まる。
カイの目の前に彩が人差し指を持っていき、彼を指さしていたのだ。
「は?一体何のマネ…」
その先の言葉が出てこない。
彼の動きはピタリと止まってしまったのだ。
「…お前、何したんだ」
どうやっても動かない自分の体を震わせてカイが彩を睨む。そうしているうちに、彩の首を絞めていたカイの手がゆっくりと開いた。
「…げほっ、うぇ…げほっ」
彩は咳込みながらやっとのことで新しい空気を吸い込んだ。そして、カイを指さしたまま、もう一方の左の手で自分の首元の彼の手をはがした。
「凡人…ね。げほっ、これだから力だけ強い奴は嫌いなのよ。力があれば自分が一番だって勘違いして…何したんだ?知りたい?」
カイは彩の言葉にハッとしたようにぴょん吉に視線を移した。
「お前か」
「ぴょん吉は時間を操るイマジン…時間の操作も微調整すれば、相手の動きも思い通りにできる。これ…アンタに教えてもらったことなんだけど…忘れてた??」
彩の後ろでぴょん吉が震えていた。
ぴょん吉が彩の指示に従って、一時的にカイの時間を止め、彼の動きを止めたのだった。
彩は一歩前に出ると、先ほどカイが自分にしたのと同じように、目一杯顔を近づけた。
「これが私の"力"。相手のこと押さえつける"暴力"だけが力だと思うなよ、変人。」
自分を睨みつけるカイにニヤリと笑うと、からかうように言い捨てた。