仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜(あいじさん作) - 61 | ケステーズ - 二次小説・SS投稿

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仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜

エピローグ?〜あすか〜

行き交う雑踏に溜め息を吐きながら、緑川あすかはスケッチブックに顔を埋めた。
季節は既に10月に入ろうとしているのに、ビル街がたてこむ新宿の大通りは暑かった。
普段なら『Amigo』の近くの公園で商売をしているあすかだが、今日に限って人通りのある所に出てきたのがそもそもの間違いだった。
人が多ければ、収入も増える…そんな考えはすぐに消えた。まず第一に、ほんの数センチ先を歩いている人でさえ、あすかの存在に気付いていない。この熱気の中、誰もが自分の目の前、或いは興味対象外のモノを視界にいれようとはしない。
「ふぅ…」
その口から再び溜め息が漏れる。だがそれは売上を憂う物ではなかった。
本郷猛が消えて、もう数ヵ月になる。
最後に顔を合わしたのはいつ頃になるだろう…元々、猛は小まめに店に足を運ぶタイプではなかった。しかし、こんなに間を空けたことはない。何処かへ引っ越したのか、それとも仕事で離れているだけなのか…そんな考えを打ち消すようにあすかは頭を振った。
「…もう今日はいいか。ちょっと早いけど店仕舞いしよう」
さっきまでの思考を打ち消すように呟くと、蓙の上に置かれた空っぽの料金箱を片付けようと手を伸ばした。
「お嬢ちゃん、ちょっといいかしら?」
突然呼び止められ、顔を上げると、其処には新宿には似つかわしくない恰好をした女性が此方に微笑んでいる。
黒く整えられた長い髪、美しく端正な顔、そして雑踏の中において己の存在を、身に纏った気品と優雅さで確固たる物にしている…万人が想像する美しさを持った女性が其処に居た。
「似顔絵を描いているのね。私も一枚お願いできるかしら」
女性は蓙に座り込み、悪戯をするような笑みであすかに言った。
あすかは僅かに頷き、スケッチブックを開いて鉛筆を走らせた。
何故か、言葉が出ない。
鉛筆を片手に描くことしか出来なかった。




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