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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜15
ファミーユでバイトを始めて二日目、ウラタロスは持ち前の頭の回転の速さで、どんどん仕事をこなせるようになっていた。
良太郎はというと…前日の疲れもあり、バイトが始まった途端、仕事はウラタロスに任せると、さっさと眠りに入ってしまっていた。
「お〜、さすがに若いもんは仕事覚えるのが早いなぁ」
ファミーユのオーナーである彩の祖父はウラタロスの背中を豪快にバシバシ叩いて誉めた。
…さすが、彩ちゃんのおじいさんと言うべきか…彼女の今までのたち振る舞いを思い出して、ウラタロスは苦笑した。
「…ところでウラ君、一つ頼みがあるんだが…」
彩の祖父は声を潜めるようにウラタロスに耳打ちした。
………
ファミーユの出入り口のすぐ脇には小さな鉄の階段(細いので梯子に近いのかもしれない)があり、それが屋上に続いていた。お店自体が小さな一軒家…屋上と言うよりは、屋根の上のちょっとした秘密基地のようだった。
ウラタロスがその階段をを登り終えると目の前には、青くて広い空が広がっていた。お店自体が丘の上にあるので、他の建物に邪魔されることがないのだろう。心地よい風が髪を揺らす。
青の空が広がる屋上に見慣れた影が一つ。
「…いた」
☆回想☆
『彩がしっかり休んでるか見張っててほしいんだ』
彩の祖父は顔を曇らせた。
『見張る…?』
『彩は事故に遭って、病院を退院してから殆ど休まねぇんだ。休みの日も店に出てきては何かやってるし、夜も殆ど寝てない…本当なら、まだ病院のベッドの上にいてもおかしくない体なんだが…』
☆回想終了☆
…今、彼女は休憩時間なのだそうだ。彩は屋上の手すりに寄りかかって座っていた。
「彩ちゃん」
いつもの調子で明るく声をかける。
「うわっ、ウラ!!」
不意をつかれたらしい…手にしていたリボンが手から落ちた。
「今は休憩時間なんじゃないの?」
ウラタロスは彩の隣に腰を下ろして、そのリボンを手に取った。飾り用のリボンを作っていたようだ。手元のカゴに溢れんばかりのリボンが積み上げられている。
…殆ど休まねぇんだ…
彩の祖父の言葉が頭をよぎる。その言葉の通りの彼女が目の前にいた…