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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜23
ー3ヶ月前のあの日
「約束してきた!!」
そう言って、君はいつもみたいに笑った。
「そんな無茶な約束…」
僕の心配なんかよそに…叶うことはないかもしれないのに…
それでも、君は、すごく嬉しそうで…
〜電ライナー〜
「約束?」
良太郎が机に突っ伏したままウラタロスに顔を向ける。
今日も一日中ウラタロスに体を貸していたせいでヘトヘトなのだ。
…約束…
あの日の彩の嬉しそうな顔が良太郎の頭をよぎる。
「…修くんのこと…かな」
良太郎が少し強張った表情になる。
僕と彩ちゃんにはもう一人、幼なじみがいた。
"古賀 修"(コガ シュウ)
僕たちの2つ上で彩ちゃんの従兄。彩ちゃんの働くお菓子屋さんのオーナーであるおじいさんの孫で、本当のあのお店の跡取り。お菓子への情熱は人一倍あって、口下手だけど、真っ直ぐで、優しい人だった。
…けど、修くんが中学を卒業してから全てが変わった。高校に進学せずに外の大きなお菓子屋さんで働くって言ってた。周りの反対を押し切って…
中卒で就職なんて考えられないし、第一幼すぎる。そんな周りの言葉なんて聞こうともせず、修くんは働き始めた。
「でも…結局、修くん、そのお店辞めちゃったんだ。僕はお菓子屋さんのこととかよく分からないけど…周りの人のイジメとかが、ひどかったらしくて…」
良太郎は視線を落とす。
「あんなにお菓子作るの大好きだったのに…」
ウラタロスの中で彩の言葉が蘇る。
『目指すものへの思いが強かった分、それが折れちゃった時の痛みは大きいんだ…』
彩の表情が今までになく悲しげに見えた。
「…それから、修くんは家に帰らなくなって、段々街の不良グループと一緒にいるようになった。…彩ちゃんは修くんに帰ってきてほしいんだ。だから、何度も修くんに会いに行って…だから不良グループに煙たがられてよく絡まれてた。」
…他にも理由はあるんだけど…
良太郎は最後の言葉だけ口に出さずに飲み込むと、視線を落とした。