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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜28
【それは些細なことだった…】
【この時、もう何かが動き出していたのかもしれない…】
【…否、もうずっと前から…】
ウラタロスは首を傾げた。
「…彩ちゃん?…」
不意にトーンの落ちた声でウラタロスが彩を呼び止めた。
「ん?」
先程の余韻のまま彩が笑顔で振り返る。
「…左足…どうしたの?」彩はウラタロスの言葉のまま目線を左足へと送る。
「引きずってるけど…」
彩は自分では気づいていないようだが、左足を引きずって歩いていたのだ。
…瞬間、彩の表情が強ばってしまったように見えた。
「…え…えっと」
言葉が上手く出てこない。
「あぁ…これ…これね、この前事故にあっちゃって…。まだ完全に治ってないんだ。大したことないから気にしないで!…ウラはちゃんと時間まで休憩すること!…じゃあね!」
そう言って彩は慌てて階段を降りていった。
「……大丈夫かな」
…3ヶ月前の事故か…
―バタン!!
勢い良く閉めた扉の音が体中に響いた。
急いで店の裏口に駆け込んだから息が切れている。
『足引きずってるけど…』
ウラの言葉が呪文のように体を縛る。
…何でもない言葉のはずなのに…
彩はその場に力が抜けたように座り込んだ。
震える手で恐る恐る左足に触れてみた。
「…っ」
一瞬、全身が冷たく硬直した。
彩は左足に触れた震える手を強く握りしめて、"それ"を堪えた。
…まだだ…まだ…
その時、必死に震えを堪えている彩の目の前に白い影が歩み寄った。
彩はその影にゆっくりと視線を合わせた。
その瞳には強い光が灯っていた。