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仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜
「そんな事より少し、お喋りをしよう。僕らは君に関する全ての事を知っている。でも君は僕達のことを全く知らない…ちょっとフェアじゃないからね」
「貴様…」
猛の拳が握られ、その表情に怒りが浮かんだ。
「いやいや…ちょっと待ってくれよ?そもそも君は僕達の目的すら知らないだろう?」
「…人類を支配し、自分たちの世界をデザインすることだろう。人間の命を踏みにじり、世界を自らの欲望のまま支配する…」
「うーん残念。まず『ショッカー』とは“Sacred Hegemony Of Cycle Kindred Evolutional Realm(同種の血統による神聖な支配権)”の頭文字の略…そんな人間みたいな支配欲から誕生した訳じゃない」
大使が暗闇に指をなぞる、すると複数の英単語が浮かび上がり、虚空を漂った。
「僕達は人類を守る為に存在している。人間という種を保存し、この地球の支配権を永遠に人間のものにする為に。どんな生物も必ず『天敵』が存在する。だが人間はいない。増えすぎた人間は害はあっても利はない。改造人間たちは人間の天敵として僕達が放った救済の処置なんだよ」
「そんな馬鹿な話があるか…なぜ、そこにある命を犠牲に出来る…なぜ、誰かの未来を奪える!?」
猛が叫んだ。
普段なら決して見られないであろう表情…激しい憎悪と怒りが猛の中に渦巻いていた。
「キミのそれは只の我が儘だ。患部にメスを入れる時に切られる皮膚が可哀想だと言っているようなものだ。今のまま突き進めば人類は必ず自滅する。だから必要なんだ『天敵』と僕達による『矯正』が」
大使の言葉が終わる前に、猛の拳がその顔面へと叩き込まれた。
「ふざけるな…人間は貴様らの研究対象じゃない…必要でない人間を切り捨てるお前達を俺は認めない!!例え全ての人間がその支配を受け入れても!!」
「……全く」
猛の背後で声が響いた。
拳の先にある筈の大使の顔面はそこにはなく、ただ無限の闇が広がっているだけだった。