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仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜26
「あぁ…ちょっと疲れ気味でヨロヨロしてるけど、大方平気だと思うよ…」
不意に飛んでくる突拍子もない彩の質問にはもう慣れっこのはずのウラタロスも、いささか動揺していた。繕う暇もなく、今ありのままの良太郎の状態が口から滑りでる。
「へぇ…」
何か企んだような顔になると、ウラタロスの顔を覗き込んだ。
「な…なに?」
自分の言ったことに後から後悔しつつ、ウラタロスは笑顔で繕って見せた。
「最近、ケーキの配達行っても良太郎見かけないからどうしたのかなって」
…そりゃあ、彩ちゃんのお店で体だけバイトしてますから…なんて言えない…
「さ、さぁ。僕も最近あっちには顔出してないからね…どうしたのかな」
こういう時こそ、自慢の喋りを発揮したいものだが…彩の前ではどうも上手くいかない。
…理由はわからない
…真っ直ぐすぎる彼女の前では、なんとなく嘘が上手く口から出ていかない
「そう…良太郎に会ったら言っておいてくれない?」
彩はさらに顔を近づけた。ウラタロスは身じろぎすることもできず固っていることしかできなかった。
「あんまり無理するなって…」
そう最後に言った彼女の表情が一瞬切なそうに影が落ちて見えた。
「あや…ちゃん?」
ウラタロスは首を傾げる。
「彩ちゃんは何でそんなに良太郎のこと心配してるの?」
心に浮かんだ疑問が不意に口からこぼれた。
…答えを聞いたところで何になる?
すぐに自分の中で何かがそれを否定した。
…僕はイマジン。彩ちゃんは人間。どうせ交わることなんてない。繋がりを作るだけ無駄なのに。
自分の中の何かが虚しく笑った。
「…無くしたくない人…だからかな」
彩はポツリと小さく呟いた。
「…え?」
ウラタロスはその意味が分からず、彩に聞き返した。
「昔ね、いろいろあって、いろんなもの無くしたの。それで、もう何も無くしたくなくて、繋がりを作るのも恐くて、人を遠ざけてた。けど、良太郎はいつも側に居てくれたんだ。どんなに遠ざけても…」
彩は思い出すように俯いた。その表情は幾分か緩んで見えた。