23
もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない 25
「それでは、お前はもう自由の身だ。屋敷を出るなり好きにするがいいだろう・・・」
「・・・・・・」
「もちろん、お前が望むなら一人で生活できるだけの保証はしよう」
「・・・・・・」
だが俺の予想に反して、そこにいたのは悲しげな瞳で俺を見つめている椛だった。
「うれしく・・・ないのか?」
「・・・・・・」
椛はコックリとうなずく。
その目には涙が浮かんでいた・・・。
その潤んだ瞳を見た瞬間・・・俺は・・・椛を抱きしめていた。
「・・・えっ!?」
俺の腕の中で椛は小さく驚きの声を上げた。
そして、みるみる椛の頬が赤く染まっていく。
俺の中で日増しに膨らみ続けていたこの想いに、俺はずっと気づかない振りをしてきたのかもしれない・・・。
・・・俺が椛に対して抱き続けてきた感情は怒りや憐みではなく、もっと純粋な気持ちだったのではないだろうか・・・。
ひょっとして・・・椛を初めて見かけたあの時から・・・ずっと・・・。
「椛・・・ひとつだけお前に頼みごとがあるんだが・・・聞いてくれないか?」
「・・・えっ」
俺が命令ではなく頼みごとをするのは珍しいのだろうか、椛は意外そうにつぶやいた。
だが、俺が本気で話していることを理解した椛は俺の目をじっと見つめ返した・・・。
今、俺は椛に対して、初めて素直に自分の気持ちを言えると思った・・・。
「俺の傍に・・・いてくれないか」
「・・・・・・」
椛は俺が何を言っているのかわからないという風に少し首を傾けた。
「・・・俺の傍に・・・いて欲しいんだ・・・ずっと・・・俺の傍に・・・」