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もみじ ハッピーエンドじゃないと許せない 5
「・・・」
それから、真理は一言も発さずにサラダや飲み物の給仕をし、静流は何が楽しいのか椛が食事をする様子をニコニコと見つめていた。
そして食事が終わり、俺と椛は制服に着替えて学園に向かった。
食事の後、俺と椛は車に乗って登校した。
「・・・ありがとう・・・ございます」
「?」
ふと椛がそう言ってきた。
「何がだ?俺は椛に礼をされるようなことなどしてないが・・・」
「・・・」
椛は何か言いたいようだったが、なかなか言えずにいた。
「言いたいことがあるならはっきり言え」
「・・・うれしかった・・・から」
椛はうつむき絞り出すようにそう言った。
「うれしかった?」
俺はやはりわからなかった。なにがうれしいんだ?朝の椛との会話の中身を思い出してみるが、そんな椛が嬉しがるようなことなど言っていなかったはずだ。むしろ、椛にとってはつらいことだったはずだが。
「食事のとき・・・一緒に食べてくれたこと・・・あと、学園に遅れないようにって・・・心配してくれたこと・・・」
「なにを言っている。一緒に食事を食べることなんて、お前だって何度でもあっただろう?」
「・・・両親が生きていた時は・・・でも、それからはずっと・・・一人だったから」
そうか、そういえば椛は預けられた家では疎まれていたようだったな。いつもみんなと離れて一人で食事をしていたのかもしれない。
「だから・・・ありがとう・・・ございます・・・和人さん」
「・・・!」
その時椛は俺のほうを向きうっすらと微笑んでいた。俺は初めて椛が笑うところを見た。それを見て、俺の中がざわついたような感じがした。
「和人・・・さん?」
「・・・!」
椛が俺の顔を覗き込むように見ていることに気づきさっと顔を離す。
「な、なんでもない」
おかしい。どうしてしまったんだ?椛に顔をのぞきこまれたぐらいで動揺するなど・・・。昨日なんて嫌というほど椛の顔を見たではないか。なのになぜ?
そうこうしているうちに車は学園について俺たちはそれぞれのクラスに向かった。