仮面ライダー〜THE MASKED RIDER〜
エピローグ?〜大使〜
異常とも言える静寂が辺りを包む。
黒い闇がその空間に満ちている…というより空間自体が闇で創られている…そんなイメージが猛の頭の中に浮かんだ。
(久しぶり…だね?本郷猛…)
不意に猛の頭に言葉が響いた。
「誰だ!!」
猛が声を荒げるが、それは小さな言霊となって闇の中を反芻し、吸収されるだけだった。
(恐れることはない。だだ闇に目を凝らせばいい…僕は目の前にいる)
その言葉とともに闇の一部が切り取られ、黒い世界の中に輪郭を作りだした。
やがてそれは形を持たない影から肉と命を持つ人間の姿へ変わった。
気がつくと闇の中に一人の人物が立っている。
若い、青年だ。
10代後半のまだ幼い面影を残した青年の姿がそこにあった。
「…お前」
猛の脳裏に奇妙な映像が浮かび上がる。
鼻を突くような薬品の匂い…全身にチューブのような物を挿入され、手術台の上に寝かされる自分の姿…。
鋭い痛み、飛び散る血液、苦悩し、涙する執刀者の顔…。
最後に毒蛇のように鋭く冷たい瞳のイメージと共に全身に激痛が走った。
「大使…??」
猛の意思に反して口が動く。知る筈のない名、知る筈のないイメージが頭の中を駆け巡る。
「よく覚えていたね…僕は『大使』…生者を地獄へ誘う案内人」
『大使』…彼はそう名乗り、笑った。
まるで真っ暗な舞台に主演の役者が現れたようなざわめきが闇の中に広がった。
闇が、大使を祝福していた。
「だがこうして顔を合わせるのは初めてかもね…どうだい、今の気分は…?」
「何を…考えている…」
「スパイダー、スコーピオン…そしてコブラとメデューサ…我々ショッカーが誇る改造人間を持ってしても、君を抹殺することは出来なかった…あまつさえ君と同等の能力を持つホッパーNo.002までが君に味方する結果となった…流石に『成功作』と言ったところかな」
「『成功作』…?何故貴様らは俺の事をそう呼ぶ…ショッカーにとって俺の存在は只の裏切り者に過ぎないんじゃないのか…?」
「愚問だね。本郷猛…君は僕達にとって無くてはならない大切な存在なんだよ?」
言葉とは裏腹に大使の顔には蔑みと嘲笑が浮かんでいた。