仮面ライダー電王〜千の偽り、万の嘘、たった一人の君の幻〜3
『ウラタロス!!!』
いつもは静かな良太郎の声が頭に響く。
どうやら彼を怒らせてしまったようだ。
…イタズラが過ぎたかな…
ウラタロスは軽くため息を吐くと、パッと彩の肩から手を離した。
…もう少しだったのになぁ…
「今、良太郎呼んできますよ」
そう言うと、店の奥へと続く扉へと歩き出した。彩はきょとんとしてウラタロスを見つめる。
すると、ふとウラタロスが足を止めて彼女を振り返った。
「またね、彩ちゃん」
そう言い残して、彼は扉の奥へ消えていった。
彩はきょとんとしたまま彼を見送る。
「…変な人」
――これが君との最初の会話…
全部がここから始まったんだ。
3/14…現在
「ホワイトデーに三倍返しなんて、本当にずるいよね…」
ウラタロスは眼鏡を中指で持ち上げると、微かにうつむいて見せた。
もう片方の手には小さなリボンの付いた箱。まだ未開封のようで、綺麗に封がされている。箱には"valentine"の文字。ウラタロスはその箱を軽く振ってみた。聞こえてくるのはリボンが揺れる音…そこに響くはずの中身の音がしない。
ウラタロスは空っぽの箱を握り締めるとその場に背を向けて歩き出した。
ひと月が過ぎても忘れることが出来ない…
「あれから、もう、1ヶ月か…」
ウラタロスは空っぽの箱を見つめると眩しそうに空を見上げた。