ヒグラシのなく頃に(消滅編其の百十九)
えっと、僕は・・確か・・体操服に着替えて・・えっ?
何で?体操服姿の梨花ちゃんが・・目の前に?しかも顔・・近いっていうか・・かわいい・・
「ノアサぁ!」
ああ、っと夢見すぎかなちょっと・・起きなきゃそろそろ・・
「起きるのです!ノアサ眠るなぁ!」
(プニプニ、プニプニ)
「プニプニするなぁ!何、一体!?」
「よかったぁ!いつものノアサなのです!」
「なっ、何がえっ?」
いきなり抱きつく・・ああ・・夢でも・・いいや・・
(ムニュ)未発達な小さな胸が・・顔に・・
「よかったぁ!よかったぁ!」
なんか喜んでる・・起きただけ・・なのに・・
「ごめん・・あのぉ・・事態が飲み込めないの・・僕だけ・・なのかな?」
「何も覚えてないのですか?」
覚えてない?えっと・・朝・・大石さんが来たんだ・・それで何か・・大切な・・何か・・
体が何か覚えてる・・体が・・震える・・
「僕・・大切なこと・・忘れてる?何か・・」
(ギュッ)
「嫌なことなら・・もう、思い出さなくていいのです・・」
えっ?
「その代わりボクが今を全部ステキな思い出に変えてあげるのですよ・・」
小さな声で・・その子は言ったんだ
「過去は過去なのです今じゃないのです・・だから・・」
「あっ・・・」
安心する・・なんか・・
「怯えなくて・・いいのです・・よ」
少なくとも今だけは忘れよう・・そう思った・・何も怖がる必要なんてない・・少なくとも今だけは・・
窓から見えたのはきれいな虹・・・
僕は・・その小さな体を・・抱き返した・・そして・・
「ありがとう・・」